医師が考える「2016年の漢字一文字」は「高」であることが12日、国内の医師約10万人以上が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」の調査でわかった。
調査は、インターネットを通じて11月21日から28日にかけて実施。サイトに登録している3013人の会員医師から有効な回答を得た。医師に今年の漢字を質問するのは、2012年から開始して今回で5回目。2013年から2015年にかけては、STAP細胞などを含む論文不正問題の影響を受けて、3年連続で「偽」が最多投票を集めていた。
「今年2016年の『医学界・医師界』を表す漢字1文字はなにか」と尋ねたところ、最も多かった答えは142票を集めた「高」だった。オプジーポに代表される抗がん剤やC型肝炎治療薬などの高額医薬品の出現のほか、医療費の高騰などが医療界の注目を集める結果となった。回答者からは、▽ 高額な薬剤が話題になった1年。このままにしておくと、保険制度が崩壊する心配が(40代、消化器内科)、▽ 医療費高騰の一途をたどり、その真骨頂のオプジーボの価格が尋常ではなかった。(50代、一般内科)、▽ 高薬価の薬剤の登場により、初めて医療経済的なインパクトが、医療関係者側からも問題視された。今後医師として治療選択肢を検討する際に、「薬価」と「費用対効果」を考える良いきっかけとなった。(50代、一般内科)‐といった声が上がっている。
2位は1位と3票差の139票を獲得した「驚」。次期アメリカ大統領に、それまで劣勢といわれていたトランプ氏が当選したことや、イギリスのEU離脱などが大きい理由とされた。医療界では、医師の逮捕や病院内で不審な事件が相次いだ件についての驚きが大きく影響している。回答者の主な意見をみると、▽ イギリスのEU離脱とトランプショックなど、想定外の社会事象が様々起きる年でした。医学会への影響も大いにあり得ます(50代、一般内科)、▽ 医大生・医師の性犯罪、非常に高価な薬剤、医師の逮捕、病院内での点滴殺人・未遂など、良いこと(ノーベル賞など)を上回る驚きのインパクトあり(50代、一般内科)、▽ トランプが大統領に。TPPでの混合診療解禁を期待していたのだが(40代、泌尿器科)‐などとなっている。
また、3位(116票)の「変」、4位の(113票)の「乱」、5位(90票)の「迷」は、今年4月の診療報酬改定や37年ぶりの医学部新設、そして揺れ動く新専門医制度など医師を取り巻く環境の変化やそれに伴う混乱を反映した結果となった。
■ そのほかトップ10の漢字
そのほかのトップ10をみると、病院経営の厳しさや医療従事者の勤務状況の劣悪化を反映した「忍」が6位、専門医の問題を表した「専」が7位、ノーベル賞を受賞した大隅教授のオートファジー(自食作用)を示した「食」が8位、医学部新設や新薬を下敷きにした「新」が9位、熊本地震や鳥取地震のほか、アメリカ大統領選挙、韓国大統領の疑惑といった世界情勢の揺れを示した「震」が10位だった。