2016年4月7日 北極域研究共同推進拠点を創設 北大・極地研・海洋機構が課題解決へ連携

北海道大学北極域研究センターと情報・システム研究機構国立極地研究所国際北極環境研究センター、海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターは、北大北極域研究センターを認定施設、極地研国際北極環境研究センターと海洋機構北極環境変動総合研究センターを連携施設としたネットワーク型による「北極域研究共同推進拠点」として文部科学大臣の認定を受け、北極域における環境と人間の相互作用の解明に向けた異分野連携による課題解決につなげる研究の進展を図ることを目的として、4月1日に活動を開始した。

北極圏とその周辺地域のいわゆる北極域は、温暖化が最も著しい地域。生態系の変化や著しい海氷減少などが顕著で、海氷減少は大気循環に影響を与え、中緯度地域の極端気象を頻発させる原因となっていることが示唆されている。

また、環境の変化は北極海での船舶の運航機会の増加や石油や天然ガス等の天然資源の開発を促進させるなど経済面での利点を生み出す一方で、北極域における人間活動の活発化による環境汚染や国家間の新たな摩擦の原因となる可能性をはらんでいる。このような地球規模の気候変動や社会・経済活動の変化によって生じる課題は北極圏国だけでは解決できないため、周辺国の協力への期待が高まっている。

こうした背景を踏まえ、政府は昨年10月に「我が国の北極政策」を新たに策定。わが国の強みである科学技術をグローバルな視点で最大限に活用し、北極域の観測や研究を推進するとともに、東アジアと欧州を北極海で結ぶ北極海航路に代表される産官との取り組みの要性も強調されており、北極の課題解決でわが国が主導的な役割を積極的に果たす決意が示されている。

北極の環境問題が国際社会共通の課題となっている一方で、北極に関する科学的側面の解明はまだ十分ではない。気候、物質循環、生物多様性等に、人間活動の影響を含めて、北極の変化が地球全体に与える影響について総合的に捉え、精緻な将来予測や社会・経済的影響を明らかにするための総合的な研究が求められている。

その上で、変わりつつある北極域の環境に対する適応策の提示や、持続可能な新たな産業分野や市場の創出への必要性が高まっている。

極地研、海洋研究機構及び北大の3機関は、文科省が別に公募を実施した北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の代表・副代表機関として採択されるなど、これまでにも北極域研究の総合的推進に向けた連携体制の強化を進めてきた。今回、さらなる連携強化の一環として同拠点の新規認定を申請し、全国初の連携ネットワーク型拠点として認定を受けることとなった。

拠点認定に伴い、3機関に所属する自然科学から人文社会科学や実学に至る広範な分野の多数の北極域研究者や、3機関が保有する船舶や海外拠点等の研究インフラを活用しつつ密接な連携を図ることが可能となり、北極域の課題解決で日本が国際社会で期待されている科学的視点に基づく貢献が図られる。

わが国は1950年代から半世紀以上にわたり、北極の観測や研究に従事しており、国際研究コミュニティから、長年の蓄積と高い研究水準に対し大きな評価や期待を受けている。わが国の北極政策では、強みである科学技術をグローバルな視点で最大限に活用することで、日本が北極をめぐる課題への対応における主要なプレイヤーとして国際社会に貢献することが目標として述べられている。さらに、このための具体的な取り組みとして、国内の研究拠点の整備や、研究活動に従事する人材の育成が設定されている。

北極域研究共同推進拠点では、わが国の北極政策を踏まえ、北極域の解明と課題解決に関する新たな学術領域の創成や北極域での新たな産業や市場の創出を促進する機能、それらの活動を持続的に発展させるための人材の育成機能と、取り組みの成果を集約し国際社会に発信する機能を有する、北極の課題解決に関する日本の中核的な拠点としての役割を果たすことを目指す。さらに、わが国が北極をめぐる課題へ産学官を挙げて対応し、国際社会に貢献するための役割の一端を担うこととしている。


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