2016年8月23日 内視鏡鑑別法を新開発 多種多様なニワトリのヒナの雌雄鑑別が容易に

農研機構畜産研究部門は、市販の管径が細い小動物用の内視鏡を改良し、ニワトリのヒナのオス・メスを簡易に判別することができる内視鏡鑑別法を開発した。これまでの機械鑑別法では、接眼レンズを覗きながら小さくわずかに見える精巣や卵巣の形態を観察してオスとメスを判別していたが、今回開発された方法では、パソコンなどの画面上に精巣や卵巣の形態が拡大して映し出されるため、雌雄鑑別が容易となり、鑑別精度や作業速度の向上が期待できる。また、この内視鏡は操作が簡易で、多種多様な品種のニワトリに利用できることも大きな特徴である。

 

従来の3つの鑑別法

鶏卵を生産する養鶏施設などでは、卵を産むメスだけが必要なため、肛門鑑別法、羽毛鑑別法、機械鑑別法のいずれかで孵化直後にヒナのオス・メスを判別している。

肛門鑑別法は、指でニワトリのヒナの肛門を開き、オス・メスの生殖突起を確かめる方法。大正13年に農林省畜産試験場(現農研機構畜産研究部門)で開発され、これまで世界中に広く普及してきた。しかし、この方法は初生雛鑑別師などの訓練を受けた特殊技能者しか行うことができない。

また、オスとメスで羽毛の伸びる速度や羽色が異なるように品種改良し、ニワトリの雌雄を鑑別する羽毛鑑別法が普及している。この方法では、誰もが容易に判別できるが、伴性遺伝を用いて改良された限られた品種のニワトリでしか行うことができない。

機械鑑別法は、「チックテスター®」と呼ばれる光学機械を総排泄腔から直腸内に挿入し、直腸壁を透かして精巣や卵巣を直接目で見て判別する方法。この方法は多少の慣れが必要だが、比較的精度の高い判別が行える。しかし、鑑別スピードが遅いため、昭和40年代には衰退し、現在は検査機器も製造されておらず、一部の限られた養鶏施設でのみ用いられている。

 

新たに開発された内視鏡の特徴

今回開発された雛雌雄鑑別用の内視鏡は、マウスやラットなどの小動物用の管が細い内視鏡((株)AVS製)を改良し、直腸壁からニワトリのヒナの精巣や卵巣を透かして見て、パソコンなどの画面上にその画像を拡大して映し出せるようにしたもの。それによって、精巣や卵巣の形でニワトリのヒナのオスとメスを容易かつ高精度に判別できるようになった。

雛雌雄鑑別用の内視鏡は、簡単な操作訓練のみで、ニワトリのヒナのオス・メスを判別できる。操作経験を積んで熟練度を高めることで、100羽を6~7分でほぼ100%の鑑別が可能となる。また、多種多様な品種のニワトリの判別が可能であり、羽毛鑑別法を使うことのできない品種でもオス・メスを判別することができる。

開発にあたり、3日間程度の操作経験を積んだ者に雛雌雄鑑別用の内視鏡を使ってもらったところ、その鑑別率は、白色レグホン種では91.1%、ロードアイランドレッド種では88.3%だった。今後、操作経験の積み重ねや、機器の使い勝手の改良などによって、鑑別精度や作業速度のさらなる向上が期待できる。

 

1~2年後には実用化

羽毛鑑別法や肛門鑑別法の使用が難しい多種多様なニワトリを飼育管理している試験・研究施設などでは、今回開発された雛雌雄鑑別用の内視鏡の導入が効果的である。また、農研機構畜産研究部門では、この方法について、今後、養鶏関係者の意見を取り入れてより使い勝手の良いものとしていくとともに、民間企業とともに1~2年後の実用化を目指して研究を進めていくとしている。


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