2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えて、障害者、高齢者、外国人等の移動制約者が複数の公共交通機関を利用した円滑な移動について調査研究を行っていた国土交通省の検討会はこのほど、成田・羽田空港から大会競技会場等の主要駅までの連続的・一体的なバリアフリーのあり方に関する調査研究報告書をまとめた。国交省では今後、報告書の内容を踏まえて関係者の協力を得つつ、2020年の大会に向けて、より高い水準のバリアフリー化を推進していく方針だ。
報告書では、複数公共機関の乗り継ぎを考慮した連続的・一体的なバリアフリー経路のあり方について、羽田・成田空港から主要鉄道ターミナルを経由して競技施設・観光地最寄り駅に至る代表的なルートを設定。障害者(視覚障害者、車椅子使用者)のモニターが実際にルートをたどって、施設間の乗り継ぎを含めた全体の連続的なバリアフリー化を調査した。障害者自身が調査箇所の「移動のしやすさ」「案内情報の得やすさ」「設備の使いやすさ」を確認し、課題を抽出している。
その結果、課題点を、①移動等円滑化基準に適合した整備がなされていないもの(段鼻テープが両端にしかない。エスカレーターにおいて上り下りの音声案内がない等)、②バリアフリーガイドラインで推奨されている整備がなされていないもの(音声案内が聞き取りづらい。ホームのエレベーター付近に狭い空間がある等)、③移動等円滑化基準やバリアフリーガイドラインに記載のないもの(誘導用ブロックの上に障害物があり、ぶつかった等)の3類型に整理。
これらの指摘を踏まえた取組の方向性として、調査対象となった空港・駅施設は、既存施設を含めたより高いレベルのバリアフリー化について早急な対応を働きかけることとした。また、調査対象となった施設以外の空港、駅等でも指摘を踏まえて施設のバリアフリー状況の再確認を進めることが必要との考えを提示。さらに、調査で指摘された部分については、施設の整備状況や障害者の利用状況等の実態を検討し、移動等円滑化基準の改正等に反映することを求めている。
大規模ターミナルでの連続的・一体的な誘導案内
大規模ターミナルにおける連続的・一体的な誘導案内のあり方については、東京駅八重洲側施設内の移動を伴う7つの仮想ルートを設定し、モニターや鉄道案内サインの専門家がそれぞれに想定される対象動線に沿って、案内・誘導サインの現況を調査した。
その結果、「案内コードの分かりやすさ」「案内コードの統一性」「視認性」「表現様式」「案内サインの設置場所」「乗り換え案内の連続性」について指摘があり、これを踏まえた高速バス・空港バスの表記法、掲出位置と表現様式のモデルデザイン案が示された。
そのうえで、取組の方向性として、試案を手がかりに、駅の構造上の制約や利用者ニーズを詳細に把握しつつ、関係者間でより一層使いやすい案内サインの検討を進めるよう求めた。また、他の大規模ターミナル施設でも、調査で指摘されたポイント等を参考に、施設内外の現状を確認しつつ、連続性・一体性のある案内サインを整備していくべきだと提言している。