中部電力は今週から、介護施設の入所者の見守りに用いる新たなシステムの実証実験を名古屋市で開始した。本人に携帯してもらう小型の端末を通じ、外出したかどうかや屋外での位置情報を把握して職員に通知する。徘徊の防止や捜索時の早期発見などの効果を確認し、より安全な環境を作るサービスの展開につなげたいという。
入所者の位置情報の把握には、愛知県半田市の加藤電機が開発した専用の端末を使う。大きさは500円玉サイズで重さは9g。約2時間の充電でおよそ1ヵ月半連続で動く。端末は靴やお守り、小型ケースなどに収納して持っていてもらう。そこから発せられる電波を、電柱に設置する通信機器なども活用して追う仕組みだ。
見守る側は、外出のタイミングを知らせるメールをスマートフォンなどに受けられる。高齢者の居場所や道の通過履歴を、専用Webサイトで確認することも可能だ。端末の位置は誤差50cmの精度まで絞り込めるという。
実証実験は来月20日まで。市内の昭和地区にある施設の入所者5人を対象とする。身に付ける際の負担や通知機能などを検証し、今後のサービスの向上に活かしていくとしている。
新たな技術を駆使して高齢者を見守るサービスは開発競争が盛んだ。富士通と横浜市、九州電力と福岡市などはそれぞれ連携してIoTを活かす実証実験を行った。NTTデータやSONY、NECなどはコミュニケーションロボットを通じた見守りサービスの展開に乗り出している。
政府は人手不足の解消に向けて、介護現場でのICT、IoT、センサー、ロボット、AIなどの活用を積極的に推進していく考え。今年度の介護報酬改定でも、見守りセンサーを導入した特養に限って「夜勤職員配置加算」の要件を緩和するインセンティブを組み込んだ。今年の「未来投資戦略」では、こうした動きを今後さらに加速させていく方針が打ち出される。