入れ歯の手入れを毎日しない高齢者は、肺炎を発症するリスクが手入れする人よりも1.3倍高いという研究結果を、東北大学などのグループが発表した。75歳以上に限れば、リスクは1.58倍高まるという。口腔衛生と肺炎発症のメカニズムを探る研究はこれまでもあったが、対象は入院患者や介護施設の入所者のものばかり。今回のように、地域に住む一般の高齢者を中心に調査した研究は初めてとなる。研究成果は、先月の24日に国際科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。
肺炎は高齢者において死因の上位を占めている。中でも多いのが「誤嚥性肺炎」だ。嚥下機能が低下した高齢者の場合、食べ物や唾液が気管に入りやすい。その際に入れ歯の表面に付着した細菌などで構成される「デンチャー・プラーク」が肺に到達することで、肺炎が発症すると考えられている。
調査は16年に要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者で、入れ歯を使っている7万1227人を対象に実施。入れ歯の手入れの頻度と過去1年間の肺炎発症の有無の関係性を調べた。
それによると、肺炎にかかる割合は、手入れを毎日する人が2.3%なのに対し、しない人は3.0%だった。75歳以上に限定すると、リスクは毎日手入れする人が2.9%だったのに対し、しない人は4.3%と両者の差が開いた。この結果、研究グループは「入れ歯の清掃を毎日行うことが、肺炎の予防につながる可能性がある」と指摘。病院や施設にいる人だけでなく、一般の高齢者でも口の中の清潔を保つことが重要だと語った。さらに、定期的に歯医者で入れ歯の状態チェックや、家庭で取りづらい歯石などの汚れを取ってもらうことも大切だと訴えている。