国土交通省港湾局と航空局は、港湾・空港工事の適正な工期の設定を通じて港湾空港建設業の働き方改革を推進するため、同省の「港湾・空港工事のあり方検討会」での議論を踏まえ、このほど「港湾・空港工事の工期の設定に関するガイドライン」を策定した。ガイドラインは、設計図書に規定する品質の工事目的物を、建設工事従事者の休日を確保しつつ標準的な施工方法と所要費用で施工する際に必要となる機関(=適正な工期)の設定の際に考慮すべき事項を取りまとめたもの。
昨年7月に、中央建設業審議会から「工期に関する基準」が勧告されたことを踏まえ、一般的な陸上工事とは大きく異なる港湾・空港の土木工事(以下「港湾・空港工事」)の特性に応じた適正な工期の設定の在り方を検討することとした。今年4月に設置した検討会とワーキンググループでガイドラインの検討を始め、6月の検討会と7月のワーキンググループで検討結果をとりまとめた。
ガイドラインの主な対象は、国が発注する港湾・空港工事。ただし、建設業法第19条の5に基づき著しく短い期間を工期とする請負契約が禁止されていることや、令和6年4月より、改正労働基準法の時間外労働の罰則付き上限規制が建設業にも適用されることになること等に鑑み、地方公共団体や民間事業者の発注する港湾・空港工事にも準用することを推奨している。
ガイドラインの構成は、工種や工程が多岐にわたるため、より分かりやすく使いやすいものとするため、港湾・空港工事全般に関する工期設定の基本的な考え方を記載した「本編」、工程、工種ごとに考慮すべき、具体的かつ詳細な事項を記載した「工程・工種別編」、参照すべき法令や、国が発注する港湾・空港工事における適正な工期の設定に係る取組に関する情報を記載した「資料編」で構成されている。
ガイドラインで示した主な取組として、適正な工期の設定にあたっては、発注者による施工条件の十分な調査、把握及び明示が重要な役割を果たす。このため、特記仕様書おいて的確に条件明示を行うとともに、施工期間、着手時期、施行時間帯及び方法等にかかる制限や関係機関との調整状況、使用する作業船の制限等、発注者が想定する施行条件等を網羅的に確認できる資料(チェックリスト等)を提供する。
また、受発注者間で工期設定の前提とする施行条件に不整合が生じないよう、契約締結後、受発注者で構成する協議の場(品質確保調整会議等)を設置し、発注者が想定する施行条件や工事工程表を速やかに受注者に提示するとともに、当該内容を踏まえて受注者が作成した工施行工程について受発注者相互で確認及び調整を行う。
発注者においては、土曜日、日曜日、祝日、夏期休暇及び年末年始を休日とする工期の設定を行うことを原則としているが、荒天日が例年に比べて多い等、受注者の責に帰すことのできない事由により当初の工期内に所要の休日が確保出来ない場合、品質確保調整会議等において受発注者間で協議を行った上で、必要があると認められる場合は工期の延長及び請負代金の変更を行う等、所要の休日が確保できるよう配慮する。