2023年12月1日 令和4年地球温暖化影響調査レポート公表 農業生産現場での影響と適応策の取組状況を整理

農林水産省は、都道府県の協力の下、地球温暖化の影響と考えられる農業生産現場における高温障害等の影響と、その適応策等について報告のあった内容をとりまとめ、「令和4年地球温暖化影響調査レポート」として公表した。その内容では、水稲をはじめ、果樹、野菜、花き、家畜等における主な影響、各都道府県の温暖化への適応策の取組状況等を整理している。今後、レポートに示されている影響や適応策等を参考として、「農林水産省気候変動適応計画」に基づく取組が各都道府県で推進されることが期待される。

農業は、気候変動の影響を受けやすく、近年、温暖化による農産物の生育障害や品質低下等の影響が顕在化している。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が令和3年に公表した第6次評価報告書第1作業部会報告書では、世界平均気温は少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、向こう十数年の間に温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に1.5度以上上昇すると報告されている。

農林水産省では、温暖化に備え、気候変動による影響への対応を的確かつ効果的に実施するための「農林水産省気候変動適応計画」を策定し、地球温暖化の防止を図るための緩和策に関する「農林水産省地球温暖化対策計画」と一体的に推進している。

適応計画では、地方と連携し、温暖化による影響等のモニタリングに取り組むとともに、「地球温暖化影響調査レポート」や農林水産省ホームページ等により適応策に関する情報を発信するとされている。

「地球温暖化影響調査レポート」は、適応計画に基づく取組の一環として、各都道府県の協力を得て、地球温暖化の影響と考えられる農業生産現場での高温障害の影響、その適応策等をとりまとめたもの。普及指導員や行政関係者の参考資料として公表されている。

 

 ■令和4年度レポート・ポイント(調査対象期間:令和4年1月~12月)

令和4年の気象の概要 年平均気温は全国的に高く、特に北日本ではかなり高かった。前年12月~2月は東・西日本では低温となり、日本海側を中心に大雪となった。8月は北・東日本で不順な天候となった。

発生報告の多い農畜産物における影響と適応策の実施状況

〔水稲〕

出穂期以降の高温により白未熟粒の発生による影響が全国で2割程度でみられ、西日本では4割程度でみられた。また、暖冬により虫害の発生による影響が全国では1割程度でみられた。

適応策としては、白未熟粒、同割粒の発生抑制のため、水管理の徹底や適期移植・収穫が実施されている。また、高温耐性品種の導入が進められており、作付面積は全国で約16万ヘクタール、高温耐性品種の占める割合は12.8%となっており、前年産と比べると0.5ポイント上昇している。さらに、穂肥施用等の肥培管理の徹底や適期防除の徹底が図られている。

 

〔果樹〕

ぶどうでは、果実肥大期以降の高温により、着色不良・着色遅延の発生による影響が全国で2割程度でみられ、西日本では、4割程度でみられた。

りんごでは、日焼け果の発生による影響が東日本では3割程度でみられた。

うんしゅうみかんでは、日焼け果の発生による影響が、西日本では3割程度でみられた。

適応策についてみると、ぶどうの着色不良・着色遅延対策として、着色優良品種や着色を気にしなくてよい黄緑系品種の導入などが進められている。

また、日焼け果対策として、りんごでは遮光資材の活用、うんしゅうみかんではカルシウム剤の散布や樹冠表層の摘果、被覆などが行われている。

 

〔野菜〕

トマトでは、収穫期の高温により着花・着果不良の発生による影響が全国で2割程度でみられ、西日本では4割程度でみられた。

いちごでは、花芽分化期の高温により花芽分化の遅れの発生による影響が全国で1割程度でみられ、西日本では2割程度でみられた。

適応策についてみると、トマトの着花・着果不良対策として、遮光資材の活用、細霧冷房・循環扇、着果率の高い品種の導入などが進められている。

また、いちごの花芽分化安定・促進対策として、新品種導入やクラウン部の冷却、培地昇温抑制、遮光資材の活用、細霧冷房などが行われている。

 

〔花き〕

きくでは、高温により開花期の前進・遅延の発生による影響が全国では1割程度でみられた。

適応策としては、開花期安定のためのシェードの活用や電照栽培による日長操作、ヒートポンプの活用による夜冷、高温耐性品種の導入などが進められている。

 

〔畜産〕

乳用牛では、高温により乳量・乳成分の低下、繁殖成績の低下の発生による影響が、全国では1割程度でみられた。

適応策としては、牛舎の送風・換気、細霧冷房の導入、早期給餌や日陰の確保などが行われている。


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