矢野経済研究所は7日、国内の介護食、高齢者食、病者食の加工食品市場、調理品(病院や施設の給食、弁当等の配食サービス)市場調査の結果を公表した。それによると、昨年度の国内の市場規模は推計で、加工食品(メーカー出荷金額ベース)が前年度比102.9%の1886億円、調理品[末端売上高(給食サービス提供価格、在宅配食サービス提供価格)ベース]は同101.4%の1兆4804億円だった。
調査は今年の7月から9月にかけて実施。給食サービス企業、在宅配食サービス企業、加工食品メーカーなどに向けて、オンラインを含めた面談や電話などによるヒアリングに加え、文献調査を行った。対象となる商品やサービスは、介護食(介護食品)、高齢者食(高齢者食品)、病者食(特別食、調整食)とした。
結果の内訳をみると、介護食の加工食品市場が前年度比103.4%の1278億円、調理品市場が同101.2%の5526億円、高齢者食の加工食品市場が同102.0%の254億円、調理品市場が同104.8%の3461億円、病者食の加工食品市場が同101.7%の354億円、調理品市場が同99.7%の5817億円と、病者食の調理品市場を除く5つのカテゴリではコロナ禍においても伸長する結果となった。
在宅配食サービスでは冷凍弁当・惣菜が堅調推移
市場で注目を集めているのは、冷凍弁当・惣菜を配食する「冷凍宅配食」。常温・チルド食を主に配食してきたサービス事業者が冷凍商材の取り扱いを強化していることもあり、市場規模は今後も拡大する見込みだ。
冷凍宅配食は供給・需要側双方にとって利点が多いことも特徴。供給側である配食サービス事業者は冷凍にすることで事業運営の効率化が図れ、デリバリーコストも削減できる。需要側である利用者はまとめ買いをしてストックできるため、在宅で業者からの配送を毎日受け取る必要が無くなるなど利便性が向上する。加えて、冷凍食品に対するマイナスイメージもなくなりつつあり、抵抗を感じる人が少ないことも市場拡大を後押ししているという。さらに、高齢者食のほか、介護食や病者食(調整食)でも商品ラインアップが充実。冷凍宅配食の市場規模は今後も二桁成長が見込まれると、矢野経済研究所は予想している。
26年度には加工食品が2091億円 調理品は1兆5923億円まで成長
同社は今後の見通しについて、高齢化や生活習慣病の増加を背景に、市場は今後も拡大するのではと指摘。ただし、国の政策や高齢者の生活スタイルの変化から、病院から高齢者施設へ、そして高齢者施設から在宅へと、高齢者の住処は今後も変化する見通しだとした。
結果的に今後は、在宅の単身高齢者や高齢者夫婦が買い物や調理の手間暇をかけることなく、栄養に配慮された美味しく安全な食事を喫食出来ることが求められると強調。加工食品市場規模は2026年度には2091億円、調理品(病院や施設の給食、弁当等の配食サービス)市場規模は1兆5923億円まで成長するのではないかとしている。