師走に入り、いよいよ来年度の介護報酬改定の改定率が決まる時期となった。
昨今の物価高などで介護事業所の経営は極めて厳しい。大幅なプラス改定が実現しなければ経営は立ち行かなくなり、安定した介護サービスは提供できなくなるだろう。そこで、今回は次期改定の改定率について考えてみたい。
◆最低でも3%の引き上げを!
財務省の資料によれば、今年度の予算ベースで介護の総費用は13.8兆円となっている。これを約14兆円と考えると、1%のプラスで約1400億円の財源が介護業界へ毎年、新たに配分されることになる。
これまでの改定率はプラス3%(2009年度改定)が最高だ。私は、最低でもこの数値を上回ることを期待したい。そうなれば、年間で約4200億円の財政規模となる。
もっとも、この水準は最低限のもので本来は4%、5%の引き上げを期待したい。ただ、少子化対策の財源確保や赤字国債などを考えるとハードルは高いだろう。
◆プラス0.7%は確実?
先日、今年度の補正予算が国会で成立した。この中に、介護職員の給与を1人あたり月6000円引き上げるための財源が盛り込まれた。今年の2月から5月までの分となっている。
このことから、来年度の介護報酬改定の実施時期は6月になりそうである。なぜなら、今回の公費による月6000円の賃上げは、介護報酬の中に組み込まれて恒久化されるためだ。補正予算は5月分までしか組まれておらず、その切り替えは6月になると予想される。
補正予算に計上された月6000円の賃上げの財源は、4ヵ月分で約364億円。年ベースだと約1100億円になる。これを介護報酬に組み込む場合、約0.7%の引き上げが必要だ。つまり来年度の改定率は、既にプラス0.7%以上となることが確実と考えられる。
◆診療報酬本体を超えないと悲惨
しかし、来年度は診療報酬との同時改定となるため一抹の不安が残る。
これまでの同時改定では、診療報酬の引き上げを介護報酬の引き上げが上回ることはなかった(本体部分など)。ただ今回は、診療報酬を介護報酬が超えないと2%、3%の引き上げを実現するのは難しい。いわば、介護報酬の改定率が診療報酬の改定率を初めて上回らなければならないのだ。
◆多少の負担増は避けられない
また、3%以上のプラス改定となると、介護保険料や利用者の自己負担など国民の負担が相応に増えることになり、これを懸念する声も聞かれる。しかし、施策として介護サービスの維持が優先されるべきであり、多少の国民負担は避けられないと考える。国民に対して丁寧に介護現場の深刻さを説明すれば、充分に理解してくれるはずである。
◆最悪のシナリオは1.2%のプラス改定
私は、少なくとも3%以上の引き上げが不可欠だと考える。ただ、やはり診療報酬を超えられないとそうはならない。ここ数年、診療報酬は0.5%前後の引き上げで推移している。このため、最悪1.2%程度のプラス改定もあり得ると不安を抱かずにはいられない。その意味で、過去の前例を覆して診療報酬を介護報酬が超えられるかどうかが最大の焦点となる。
残り少ない時間だが、介護業界は最終局面まで現場の厳しい状況を説明し、報酬の大幅増の必要性を訴え続けていくべきである。