「どうして日本人ではなく外国人を雇うのか。曖昧なままではいけない」
特定技能特化型プラットフォーム「Linkus」の運営など、外国人雇用のサポートで成果をあげているBEENOS HR Link株式会社の岡崎陽介代表取締役社長は、特にこの点を強調した。深刻な人手不足を背景に外国人に目を向ける介護事業者が増えているなか、岡崎氏は〝雇用する理由をはっきり持つこと〟が大切だと指摘する。外国人を受け入れる事業者に求められることを語ってもらった。
−− 外国人の受け入れについて、御社の取り組みを教えてください。
在留資格「特定技能」を軸に事業を展開しています。14業種すべてを対象としており、もちろん介護分野にも力を入れています。
弊社で取り組んでいるのは大きく2つ。1つは特定技能外国人の雇用・支援に関する「コンサルティング」や支援業務を受託する「登録支援機関」。もう1つは特定技能特化型プラットフォーム「Linkus」です。これは外国人の雇用・支援に伴う事務作業などをデジタル化し、受け入れ企業や登録支援機関の負担を大幅に軽減する機能を有しています。
例えば、在留資格申請書類の生成・管理、ステータス管理、定期面談対応、報告書作成、在留期限更新のアラート機能、TODOチェック、 チャットなどなど。特定技能外国人の雇用・支援に際し必要な業務のほぼすべてをカバーしています。
−− 外国人を受け入れる介護事業者には、どんな課題があると思いますか?
多くの介護施設が外国人の雇用について、まだご存じない部分が多いというのが大きなポイントですね。日本人の採用と同じだと考えたらかなり難しいでしょう。
例えばですが、特定技能の外国人を受け入れるなら住居の確保、日本語学習のフォロー、公的手続きの支援、相談・苦情の対応、国籍によっては食事への配慮、出入国の際の送迎など、本当に様々なサポートが必要となります。そうしたことの情報が、業界全体的に伝わっていない状況が見受けられます。
制度ルールなどを理解しないままで、「日本人が採れないから外国人でいいや」という安易な感覚で受け入れようとすると、後々問題が起きてしまう可能性が高くなると思います。まずは、必要な知識や体制の部分において、事前準備をして頂くことをお勧めします。
もっとも、そもそも忙しい中で、少なからず業務負担が増えてしまうことは大きな課題です。我々も「Linkus」などを通じてサポートしていますが、デジタル化の一層の促進や行政の更なる支援などもやはり必要ではないでしょうか。
−− 受け入れを希望する介護事業者はどのような心構えを持ち、どういった取り組みをすべきでしょうか?
「なぜ外国人を採用したいのか」を突き詰めて考えるべきです。単に人手不足だから雇うというだけでは、なかなか上手くいきません。
私が関わった受け入れ施設の中には、「外国人にも優秀な方が多いから」「職員の若返りを図りたいから」「職場の多様性を高めたいから」などを理由とする事業者様もいます。こうした動機が一緒にあると、格段と成功しやすくなると考えます。
「〇〇のために外国人を受け入れたい」「〇〇に向けて外国人と共に働きたい」。
こうした考えに重きを置いて採用すれば、外国籍従業員の雇用環境をきめ細かく整えることも自然に進められるでしょう。外国籍従業員を会社にとって必要不可欠な存在と位置付ければ、細かいサポートも「彼らに働き続けてもらうために」と前向きに取り組めます。
最終的には、日本人従業員と外国人従業員という感覚すらない、シームレスな環境を目指すべきだと考えますが、まずは外国籍従業員に気持ちよく定着してもらえる様に…という感覚を目指して頂けると良いのではないでしょうか。
−− マンパワーの確保以外にも受け入れの理由を掲げる、ということですか?
そうですね。外国籍従業員がいることで新たな機会が創出される例は少なくありません。
例えば、外国籍従業員とご利用者さんの会話によって、ご利用者さんが日本語を教える様な時間が生まれた施設もあります。外国籍従業員は仕事をしながら日本語が学べ、ご利用者さんは孫の世代に言葉を教える環境ができる。お互いにとって良い効果が生まれる例が多々あることを知って頂きたいです。
コロナ禍の影響により、これまで特定技能外国人の受け入れが残念ながら滞っていました。ただ、今後はいよいよ活発になっていく見通しです。受け入れを検討中の事業者様には、ぜひ「単なる採用」ではなく「採用後の定着」も含めてを熟慮して頂きたいですね。結果としてそれが成功への近道になると思います。