昨年1年間の介護事業者の休廃業・解散が過去最多となったことが、17日に公表された東京商工リサーチの新たなレポートで明らかになった。
前年より15件多い510件。人手不足の悪化や競争の激化などを背景に初めて500件を超えた。
経営者の高齢化も大きな要因。倒産に至る前に事業継続を断念し、早めの撤退を決めたところが多い。
昨年1年間の倒産は122件。休廃業・解散を含めると、2年連続で600社超が市場から退出したことになる。
倒産件数は2022年が最多。この年は、通所介護などを運営する「ステップぱーとなー」のグループ31社が連鎖倒産したことも影響した。
昨年の倒産件数は過去2番目の高水準。サービス別では訪問介護が最も多く、全体の半数以上を占める67件(過去最多)にのぼった。深刻な人手不足、止まらないヘルパーの高齢化、長引く物価高騰などで経営環境が一段と厳しくなるなか、遅れをとって行き詰まった事業者が多いとみられる。
倒産の理由では、必要な人材や利用者を獲得できないことなどに起因する「販売不振」が、全体のおよそ4分の3と最も多い。倒産した事業者をみると、職員数10人未満が全体の8割超。小規模なところが大半を占めている。
「事業者が淘汰の嵐に晒されている」。東京商工リサーチは現状をこう表現した。
今後については、介護業界全体のトレンドに大きな変革が生じないまま、よりシビアな競争環境になっていくと見込んでいる。
他産業の賃上げや大手の参入・事業展開が進む一方で、人件費を膨らませたりテクノロジーを導入したりする余裕のない事業者も少なくないと指摘。「2024年は一段と小・零細事業者の倒産、休廃業・解散が増勢を強めるとみられる」と分析した。
このまま事業者の大規模化が加速していくことになるのか、今後業界の構図の変遷にも更なる注目が集まりそうだ。