介護保険の負担の仕組みがこの8月から変わる。制度の持続性や公平性の向上につなげたいとして、政府が昨年末に方針を決定していた。厚生労働省は7月31日に出した「介護保険最新情報」のVol.597で、その内容を改めて周知。関係者に理解と協力を呼びかけている。
見直しとなるのは「高額介護サービス費制度」。介護にかかる費用が家計を圧迫しすぎることのないよう、利用者の所得などに応じて自己負担にひと月あたりの上限額を設定したうえで、それを超えた分を後から払い戻す救済措置だ。この上限額が引き上げられる。
対象は5段階ある所得区分のうちの「一般(第4段階)」。住民税が課税されており、年収が1人暮らしで383万円、夫婦で520万円に満たない世帯(*)などが該当する。7月までの上限額は3万7200円だったが、今月から7200円アップの4万4400円とされた。生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯など、「一般」以外の高齢者に変更は及ばない。
* 所得区分「一般」
住民税が課税されており、現役並みに所得のある層でない世帯。現役並みに所得のある層とは、課税所得が145万円以上の高齢者がおり、かつ、世帯内の高齢者の収入が合計で520万円以上(1人暮らしの場合は383万円以上)の世帯を指す。
加えて、年間の上限額も新たに導入されることになった。所得区分の「一般」の中で、2割以上の自己負担を支払う高齢者がいない世帯に適用される。その額は44万6400円。これまでのひと月の上限額(3万7200円)の12ヵ月分に相当する。たとえひと月の負担が重くなったとしても、年間でみると従来の負担を上回ることはない ― 。そんな設計になっている。ただし、これは向こう3年間だけに限定された激変緩和措置。2020年7月をもって廃止されることになっている。
■「総報酬割」への転換、今月スタート
40歳から64歳の現役世代の介護保険料を算定する際の手法も、この8月から切り替えられていく。いわゆる「総報酬割」への転換だ。今後、2020年度にかけて段階的に進められる。
「総報酬割」は、個々の負担能力がより色濃く反映されるようになることが特徴。厚労省によると、収入の多い大企業のサラリーマンや公務員ら約1270万人の負担が重くなる。一方で、相対的に所得の低い中小企業のサラリーマンら約1650万人の保険料は軽減となり、国の歳出も約1450億円減らせる(全面導入の場合)という。
このほか、医療保険の「高額療養費制度」も今月から見直される。「高額介護サービス費制度」と同様に、患者の所得などに応じて自己負担にひと月あたりの上限額を設定したうえで、それを超えた分を後から払い戻す救済措置だ。政府は昨年末、上限額の引き上げに踏み切る方針を決めていた。
対象は70歳以上。年収がおよそ370万円以上の人の外来について、現行の4万4400円から1万3200円アップして5万7600円とすることなどが柱で、医療の分野でも高齢者の負担がさらに増すことになる。