東京商工リサーチは7日、増加が著しい介護事業者の倒産について分析する調査レポートを新たに公表し、足元の最新動向を明らかにした。
それによると、今年度の4月から9月の倒産は95件。前年同期の約1.7倍と大幅に増え、上半期としての過去最多を記録した。
特に訪問介護と通所介護の倒産が急増した。
要因はケースごとに異なるが、深刻な人手不足や長引く物価高、事業者間の競争の激化、今年度の介護報酬改定などが影響しているとみられる。通所介護は基本報酬が引き上げられたが、その規模はかなり小さかった。介護事業者からは、今の人件費やコストなどの増加を補うには「不十分」と悲鳴があがっている。
もっとも、介護業界は新規参入の新設法人も増加傾向が続いており、適者生存の然るべき新陳代謝が進んでいるという面がある。
ただ同時に、倒産件数の増加が介護崩壊につながると懸念する関係者も多い。状況は地域によって異なるが、必要な在宅サービスをタイムリーに受けられない高齢者は以前より増えており、こうした問題が一段と加速していく可能性が高い。
東京商工リサーチは調査レポートの中で、公定価格の縛りで価格転嫁が難しく賃上げなどが遅れている介護業界の構造問題も指摘。「高齢化社会を迎え、介護事業者の重要性は増している。国などの効率化や人材確保の支援が欠かせない」とまとめた。
今回の調査レポートによると、今年度上半期の倒産形態の95.7%が破産。売上不振で再建を諦めた事業者が大半を占めていた。資本金1千万円未満が87.3%、職員10人未満が85.2%で、零細事業者の行き詰まりが多いことが特徴だ。
今年1月から9月の介護事業者の倒産は132件。既に昨年1年間の倒産件数(122件)を超えており、早ければ今月中にも年間の過去最多(2022年の143件)を上回る見通しだ。