2022年11月25日 今年も発表『科学道100冊』 書籍で伝える「科学のおもしろさ」(理研)

わが国唯一の自然科学の総合研究所である理化学研究所(理研)と本の可能性を追求する編集工学研究所による『科学道100冊プロジェクト』。書籍を通じて、科学者の生き方や考え方、科学のおもしろさやすばらしさを届けることを目指し、選りすぐりの本を紹介している。2022年度版『科学の道100冊2022』が11月18日に発表された。

2017年に始まった科学道100冊プロジェクトは、全国の書店や図書館、教育機関などでフェアが展開され、多くの人々に科学の良書との出会いを提供してきた。多くの人々から好評を得ており、2019年からは中学生・高校生を中心とした幅広い層に対して、科学の多様な魅力を継続的に伝えるため、毎年恒例の企画としてリスタートした。

2019、2020、2021年のフェアは、全国500ヵ所の図書館、教育期間、書店などで展開され、さまざまなメディアに取り上げられた。

今回発表された「科学道100冊2022」は昨年と同様、旬のトピックなど三つの軸で選んだ「テーマ本」50冊と、時代を経ても古びない良書として選んだ「科学道クラシックス」50冊の計100冊で構成されている。

2022のテーマは〝情報の世紀〟〝光を追いかけて〟〝科学史タイムトラベラー〟の三つ。各テーマに精通した理研の研究者が選書アドバイザーを担い、アドバイスをもとに「テーマ本」50冊を選書した。

内訳をみると、〝情報の世紀〟で選ばれたのは、『ぼくのニセモノをつくるには』(ヨシタケシンスケ著、ブロンズ新社2014)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ―増補新版 世界を信じるためのメソッド―』(森 達也著、ミツイパブッリッシング2019)、『情報と秩序―原子から経済までを動かす根本原理を求めて』(セザー・ヒダルゴ著、千葉敏生訳、早川書房2017)など。

このうち『ぼくのニセモノをつくるには』は、〝情報としての自分〟の複雑さに気づく発想絵本で、『フェイクニュースであふれる世界に生きる君たちへ』は、ニュース現場で働きながらメディアのあり方に疑問を持った著者が正しい情報の選び方を描いている。

〝光を追いかけて〟のジャンルは、『写真科学絵本 ひとすじの光』(ウォルター・ウィック(文・写真)、千葉茂樹訳、佐藤勝昭監修、小学館2019)、『鏡の中の物理学』(朝永振一郎著、講談社1976)、『光の量子コンピュータ』(古澤 明著、集英社インターナショナル2019)など。ノーベル物理学賞受賞者の朝永博士による著書『鏡の中の物理学』は、光子(こうし、光の粒子)を被告人に見立てた法廷劇を通じて、量子力学の二重スリット実験の不思議を描いた名作。

〝科学史タイムトライベル〟では、科学で進化してきた人類の7万年の歴史旅を楽しむ名著を紹介している。錬金術や自然発生論など、一度は否定されたものの、別の視点から復活した科学に注目し、次のパラダイムを探る『〈どんでん返し〉の科学史』(小山慶太著、中央公論新社2018)などが選ばれた。

感染症の流行や不安定な国際情勢など、時代の大きな変化のなかでデジタル化が加速し、科学の重要性は一段と増している。理研などでは「同プロジェクトが中高生が科学に興味を持つきっかけとなれば」と、多くの中高生が選ばれた本を手にすることへの期待感を表明している。

「科学の道100冊2022」は申し込みのあった全国の公共図書館、中高校など教育機関、一部大型書店で11月19日から順次展開されている。


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