親世代は自身の終末期での延命治療は望んでいないが、子ども世代の気持ちは、「親に一日でも長く生きてほしい」。日本財団が行った調査で、こうした親子の意識ギャップが明らかとなった。〝親の心、子知らず。子の心、親知らず〟。『人生の最期』への思いにすれ違いが生じている現状が浮き彫りとなった。
調査は、人生の最期をどのような場所でどのように迎えたいかについて、看取る側と看取られる側の両方の考え、思いを明らかにし、また、その背景に人生に対する価値観を把握することを目的に実施したもの。看取り側である35歳から59歳かつ親が67歳以上で存命の男女、看取られ側としては67歳から81歳の男女を対象に実施した。
人生の最期、「子どもの家」はイヤ 理由は「家族に迷惑かけたくない」
調査ではまず、死期が迫っているとわかったときに人生の最期を迎えたい、迎えさせたい場所について聞いた。看取られ側の親世代、看取り側の子どものいずれも最も多かったのは「自宅」。いずれも回答率6割を占めた。続いて多かったのは「医療施設」で約3割が答えた。一方で、絶対避けたい場所としたのは、親世代が「子どもの家」と「介護施設」、子ども世帯は「介護施設」と回答した。
親世代が「自宅」で最期を迎えたい理由としては「自分らしくいられる」「住み慣れている」、また、「医療施設」は「家族に迷惑をかけたくない」との理由から答えた。
避けたい場所として親世代が「子どもの家」と答えたのは、「家族に迷惑をかけたくない」から。子ども世帯は有料老人ホームや特別老人ホームといった「介護施設」で親が最期を迎えさせたくないと回答した。男女別では男性が多く女性に比べて14%高い。
親の介護「期間わからない」心配
子ども世帯に、親が最期を自宅で迎えることを望んだ場合に、心配しそうな点や困りそうな点について聞いた。「どのくらいの期間が必要がわからない」が最も多く約5割が回答。「何をしたらよいかわからない」「仕事と両立できなさそう/家族が仕事と両立できなさそう」との声も多数聞かれた。
死期が迫り人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に、重要だと思うことに関しては、一人暮らしの親世帯の8割近くは「一人でも最期を迎えられること」とした。「体や心の苦痛なく過ごせること」や「家族等の負担にならないこと」との回答も多かったが、「少しでも延命できるようあらゆる医療を受けられること」と回答した親世代は少数派だった。
一方で、子ども世帯に対しても、「親の死期が迫ってどこで人生の最期を迎えたいかを考えるときに、何が重要だと思うか」という質問をした。子ども世帯は、親が「積極的な医療を受けられること」「可能な限り長生きすること」「少しでも延命できるようあらゆる医療を受けられること」を望んでいると思っている。
こうしたことは、親世代は望んでおらず、親と子、双方でギャップがある。こうした現状を財団では、〝親の心、子知らず。この心、親知らず〟と表現。人生の最期について、互いの思いにすれ違いが生じていると指摘する。
親子での話し合い、子供世帯は約5割
親子での話し合いに関しても調査した。子ども世代の53.8%、親世帯の75.9%が「お葬式・お墓」「人生の最終段階における受けたい(受けたくない)医療・療養」「財産など相続」「最期の迎え方」「最期を迎える場所」のいずれかについて話し合ったことがあると回答した。
また、近所との付き合いに関しても確認。親世代は約5割が、日常的に立ち話する程度以上の近所付き合いを行っているが、子ども世代はこうした近所付き合いを行っているのは、3割未満だった。