2022年2月9日 人口非過密地で顕著〝男余り〟 東大が婚活調査 地理的分布がカップル形成の障害

わが国では、多くの成人が結婚したいという意思を有しているにもかかわらず、独身のままである割合が大きく、またその割合が年々増加している。こうした現状を踏まえて、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室が行った調査では、全国の代表性を有する調査データを用いて、結婚市場にいる未婚の日本人男女の数を推定。特性を分析し、パートナーに何を求めているかを明らかにした。その結果、結婚意思を持つ18‐49歳の未婚女性は約848万人、未婚男性は約983万人と推定された。18~24歳では女性も男性も同数であるが、25~39歳では約80万人(男女比1.22)、40~49歳では約50万人(男女比1.38)と男性の方が余剰であることがわかった。居住地域別では、人口非過密地域(男女比1.31)、関東地方(男女比1.23)で特に男性余剰が顕著(約60万人)で、男女の地理的分布が結婚市場でのカップル形成の障害になっている可能性が示唆される。

高収入・高学歴の男性が好まれることは、以前から「三高」(高収入、高学歴、高身長)という言葉で表現されてきた。三高は、1980 年代後半から1990年代前半のバブル期に特に広まった夫として望ましい条件を表す言葉。女性がフルタイムの仕事と子育ての両立が難しいことや、女性は主に家庭を守るものであるという時代背景が、この選好の一因であったと思われる。

実際に、これまでに報告されている通り、高収入、定職、高学歴(40‐49歳の場合)であるほど、結婚できる可能性は高まることが明らかになったが、同時に三高のうちの二つ(収入・学歴(我々の調査では身長は調査対象外))を満たす人がいかに少ないかということも明らかになった。実際、年収700万円以上の男性では、84%(25~39歳)、92%(40~49歳)が既婚であるのに対し、年収0~100万円未満では既婚者の割合は23%(25~39歳)、33.4%(40~49歳)であった。

このように、低収入の男性が多いこと、また、これらの男性はすでに結婚している可能性が低いため、実際にはこのような低収入の男性では結婚の意思を有さない人の割合が多いにもかかわらず、わが国の結婚市場の大半はこのような男性で占められている。

例えば、年収0~300万円の男性は618万人(62%)、年収400万円以上の男性は196万人(20%)で、年収700万円以上の男性はわずか16万7000人(2%)であった。年収700万円以上の男性では、その約四分の三が大卒であった。

パートナーの好みについては、これまでの出生動向調査の報告と同様に、性差が観察された。結婚相手に求める条件として、外見を除くすべての項目(学歴、職業、経済力、性格、互いの趣味、仕事への協力・理解、家事・育児への姿勢・スキル)で、女性の方が男性よりも「重要である」と回答した割合が大きい傾向がみられた。特に、「家事・育児に対する姿勢・能力」については、「重要である」(54%)、「考慮する」(42%)と回答した女性の割合が高く、男性の家事への貢献への期待が高まっていることが伺える。

これは、「低リスク(安定した職業)」「低依存(自分のことは自分でできる、家事の手伝いを必要としない)」「低姿勢(男だからといって権威があると思わない)」という夫の望ましい性質を表すのによく使われる言葉『三低(さんてい)』に通じるところがあるかもしれない。男女間の選好の差が最も大きかったのは、「経済」で、「重要である」または「考慮する」と回答した女性対男性の割合は94%対41%。また、「職業」は85%対44%、「学歴」は54%対29%であった。多くの文献によると、理想のパートナー像について質問した場合、女性は男性よりも収入や社会的地位を重視する傾向があり、男性は女性よりも外見を重視する傾向があるとされるが、今回の調査結果でも同様の傾向がみられた。

また、高収入・高学歴の未婚男性が婚活市場には少ないため、もし、日本の女性が自分と同等かそれ以上の収入の男性を好むようになれば(同類婚/上昇婚)、特に高収入の女性にとって、高収入の男性をめぐる競争は激しくなることが今回の調査推計からも明らかとなった。

理想の結婚年齢と理想の結婚相手の年齢に関する分析からは、日本の結婚市場での需要と供給のミスマッチの可能性が指摘された。平均して、女性は結婚時に自分より1‐3歳年上の男性を好んでいた。一方、男性は26歳(結婚時)までは同年齢の女性を好み、それ以降は年下の女性を好む傾向があり、好みの年齢差は年齢とともに大きくなることがわかった。したがって、年下の相手を好む男性の方が、年上の相手を好む女性よりも多いといった傾向がうかがえた。


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