京都大学は、中高生を対象としたゲーム型サイト『探検!京都大学』モバイル版を5月13日に開設した。一昨年10月の山極総長就任を機に開始した「主体的に仕掛けるブランド戦略」の一環として、〝京大らしい個性〟を打ち出すために、昨年4月に設けた『探検!京都大学』のモバイル版。
『探検!京都大学』は、通常のサイトに求められる、見やすさや使いやすさといった常識をあえて破って「めんどくさい」ことだけを追求した、これまでにない全く新しいサイト。
京大では、創立以来大事にしている考え方として、「回り道の精神」がある。短期的な研究成果や効率的な研究手法だけを求めるのではなく、多少遠回りをしても多様な発想や思想に出会い、さまざまな経験をすることで、誰もが思いもつかなかったひらめきや発明につながる研究スタイルや、既存の学問領域から飛び出して、さまざまな知識に触れ学びを深める精神のこと。
サイトは、この「回り道の精神」から着想を得たもので、「めんどくさい」ことを楽しめるユーモアこそが、将来イノベーションを起こす人材に必要な資質の一つであるという考えに基づいている。
ゲームは、京大に実在する建物、学生、研究者、研究ストーリーをモデルにした『惑星 京都大学』内を、すごろく形式で進む。途中「マニアックなクイズ」や「こじらせ系キャラクター」「防ぎようのないトラップ」など、あまりのめんどくささに、スマホを何度も投げ捨てたくなる衝動に襲われながらも、クリアを目指す。
搭乗するキャラクターも、みんなどこか「めんどくさい」。①今年で在籍15年、京大雑学に精通しすぎており、『イカ京』から神と崇められるが、その姿を見た者はいないという〝神イカ京〟=サイト画像中央のキャラクター=や、②吉田山に生息し、たまにキャンパスに降りてきて、強引に超マニアックな知識を披露する〝こじらせゴリラ〟など多種多彩。
ちなみに、『イカ京』とは〝いかにも京大生〟の略語。一般的には勉強や好きなことにのめりこむあまり、ファッションに関心がなく、チェック柄のシャツに色落ちしたジーパンを〝イン〟したりする学生を指す。また、お酒の場などで小難しい議論をしたり、自分の得意分野に関する知識を容赦なく披露したりする空気が読めない「めんどくさい」学生も含まれるという。
ゲームを通して、京大のユニークな研究内容や研究者ならではのエピソードといった、ディープな京大ワールドを知るだけでなく、中高生にすぐに答えが見つからない「めんどうくささ」と「楽しい」と思える体験を提供する。
サイトの完成にあたり京大では、「いちいちめんどくさい、というサイトのコンセプトは、若年層に受け入れがたいものがあるかもしれない。しかし、その「めんどくささ」を楽しめるユニークは、将来イノベーションを起こす人材に必要な素質の一つと考えているし、そのような素質を持った学生を必要としている」と制作意図を説明している。
また、山極総長は、「他人と違うことを発想し、合理的なことではなく、まず『おもろい』ことを考える。それが思わぬ発想で常識を覆し、社会にイノベーションを起こす」と話している。