2018年10月10日 中高年の自殺、やはり多いのは月曜の朝 早大准教授らがデータ分析で解明、支援強化に期待

40歳から65歳のいわゆる中高年男性の自殺は、やはり月曜日の朝に多い―。早稲田大学政治経済学術院の上田路子准教授と大阪大学大学院国際公共政策研究科の松林哲也准教授らの研究グループは、日本国内の41年間(1974年~2014年)の自殺者約90万人の死亡時刻データを調べ、性別や年齢グループによって自殺で亡くなる曜日や時間帯が異なること、さらに、経済状況が悪化するにつれ、早朝から通勤時間にかけての中高年男性の自殺が増加することを明らかにした。これまで月曜日に自殺が多いと言われていたが、客観的データで傾向を明確にしたもの。従来と比べてより効果的な曜日・時間帯にサポート体制を強化・充実させることが可能となるため、自殺を防ぐことにつながると期待されている。

自殺は多くの国で大きな社会問題で、WHOの2014年調査によると、全世界では毎年80万人が自ら命を絶っているといわれている。日本での自殺者数はここ数年減少傾向にあるが、依然として日本の自殺死亡率は他の先進国と比較して高い水準にとどまっている。

自殺は基本的に〝防ぐことのできる死〟(WHO)と考えられており、また自殺の「負の外部性」は大きいことから、自殺で亡くなる人を一人でも少なくすることは、社会全体で取り組むべき非常に重要な課題と考えられている。自殺防止には、自殺が起こりやすい時期や時間帯を特定し、そのような時期や時間帯に相談体制を充実させ、見守りを強化することが不可欠。これまでの研究で日本では夏休みなどの長期休み明けに学生・生徒の自殺が多いことや、月曜に自殺が多いこと、自身の誕生日に自ら命を絶つ人が多いことなどについては明らかになっていたが、自殺が多発する時間帯については国内だけでなく他国でも体系的な研究がされてこなかった。

研究グループは共同研究を行い、1974年から2014年の間に自殺で亡くなった約90万人の死亡時刻を調べ、性別・年齢グループ別に自殺の起こりやすい時間帯を明らかにした。さらに、自殺の背景にはうつ病などの健康問題だけでなく、経済問題も大きな要因としてあることが知られていることから、経済状況と自殺の起こりやすい時間帯との関連について調査した。

また、人口動態調査の死亡票を分析対象とし、1974年から2014年に日本国内で自殺で亡くなった20歳以上の日本人のうち、死亡日時が記録されている87万3268名について死亡時刻・曜日を性別・年齢グループ別に集計。その際、調査期間の41年間を1974年から1994年、及び1995年から2014年の二期に分け、集計。さらに、死亡時間帯ごとの死亡者数に統計的に有意な差異があるか分析した。

その結果、①40歳から65歳までの中高年男性の場合、朝(午前4時から7時59分まで)に自殺で亡くなる方が一番多く、特に日本経済が悪化した1990年代後半以降は月曜日の朝に自殺者数の大きなピークがあることがわかった。

1995年から2014年のデータを用いた分析結果によると、40歳から65歳の男性が月曜日に自殺で亡くなる頻度は土曜日と比較して1.55倍で、また彼らが出勤時間前(午前4時から7時59分まで)に自殺で亡くなる頻度は夜遅くの時間帯(午後8時から11時59分まで)と比較すると1.57倍であることが明らかになった。

20歳から39歳の男性の自殺に関しても同様で、1995年以降は朝の通勤時間帯、特に月曜日の朝に自殺で亡くなることが多い傾向があった。しかし、分析を1994年以前に限定した場合、どの年齢の男性にも出勤時間前に自殺が集中する傾向が認められなかった。


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