2023年7月25日 中小企業の6割が人材確保に苦慮 東商デジタルシフト・DX実態調査で明らかに

東京商工会議所(小林健会頭)は、中小企業のデジタルシフト・DXの実態を把握するため標記アンケートを実施し、集計結果を取りまとめた。ITを活用した社会業務効率化に4割以上の中小企業が取り組んでいるものの、「旗振り役となる人材」がいないことを、多くの企業が課題としてあげている。デジタル人材についても、6割を超える企業が確保に苦慮している現状も浮き彫りとなった。

調査は5月15日から6月22日に、主に都内の会員中小企業約1万社を対象に実施し、1336者から回答があった。2021年2月に引き続き行われた今回の調査によると、中小企業のデジタルシフトの状況(導入・活用レベル)では、調査で最も低い活用レベルとした「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」(4レベル中レベル1)は18.8%(前回調査比▲3.9ポイント)で、2番目に低い活用レベルである「紙や口頭でのやり取りをITに置き換えている」(レベル2)は30.6%(前回調査比+8.0ポイント)。上から2番目に高い活用レベルである「ITを活用して社内業務を効率化している」(レベル3)は43.6%(前回調査比▲0.6ポイント)、さらに最も高度なレベルのデジタル・DX活用事例である「ITを差別化や競争力強化に積極的に活用している」(レベル4)は6.7%(前回調査比+0.6ポイント)という結果となった。

従業員規模別では、規模が大きいほどデジタルシフトが進んでいる傾向がみられ、また、従業員の平均年齢別では、平均年齢が若い企業ほどデジタルシフトが進んでいる傾向が浮き彫りとなった。さらに、直近3年間の利益の傾向別では、利益が増加傾向と答えた企業でデジタルシフトが進んでいる傾向が示されたという。

中小企業のデジタルシフト・DXの課題として最も多かったのは、「旗振り役が務まるような人材がいない」で、33.8%が回答した。「従業員がITを使いこなせない」(29.5%)といった人材面に関する課題も多かった。

次いで、「コストが負担できない」(27.0%)などコスト面でも問題点や、「業務内容に合ったデジタルツール・サービスが見つからない」(24.5%)、「導入の 効果が分からない、評価できない」といったデジタルツールの選択と導入効果の評価に関する課題(23.0%)が続いた。

 

人材確保へ「何もしていない」35%

調査では、デジタルシフトの計画・目的に関しても聞いた。全体では「業務効率化」が最も多く、94.1%。レベル4(最もデジタルシフト・DX活用レベルが高い)の企業では、「顧客満足度の向上」「企業文化、働き方の変革」が上位に挙げた。

デジタルシフトを進めることによって得られた効果としては、全体で最も多かったのは「業務効率化」で81.4%だった。レベル4の企業では、「業務の見える化」や「社内コミュニケーション促進」なども上位に挙げられた。

デジタル人材の確保状況については、「あまり確保できていない」と答えた企業が42.4%と最多。「全く確保できていない」と答えた企業も19.5%にのぼり、61.9%の中小企業がデジタル人材の確保に苦慮していることが明らかになった。

デジタル人材の確保の方法としては、「既存社員の育成」を行っていると答えた企業が最も多く53.2%。次いで多かったのは「何も実施していない」で、35.8%の企業が回答した。

サイバーセキュリティ対策の状況については、「ある程度対策している」と回答した企業が最も多く、69.1%を占めている。一方で、「十分に対策している」と回答した企業は16.9%にとどまり、「あまり対策していない」企業は12.0%、「全く対策していない」企業は1.5%となった。

自社に対するサイバー攻撃を、「受けたことがある」と答えた企業は20.8%、「受けたことがない」と答えた企業は64.1%。「分からない」と答えた企業は14.2%だった。

サイバーセキュリティ対策に関する課題としては、「社内の危機意識が低い(ない)」が28.2%と最多で、次いで「対策を進めることができる人材がいない」25.7%。一方、「特に課題はない」と答えた企業も27.0%でみられた。


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