今年1月1日現在、世界の営業運転中の原子力発電所は443基、発電量4億937万5000キロワットで、前年の実績から4基、337万4000キロワット分増加し、3年連続で過去最高の合計出録を記録した。一般社団法人日本原子力産業協会が、世界の電気会社等から得たアンケート回答等に基づき取りまとめたデータを集計し、「世界の原子力発電開発の動向(2018年版)」で明らかにしたもの。今回の調査で営業運転開始が明らかになった合計7基の原子炉のうち、中国、インド、パキスタンのアジア3ヵ国が5基を占め、ロシアとアルゼンチンが各1基。一方、韓国、ドイツ、スウェーデンで前半まで「運転中」であった原子炉のうち、3基が閉鎖されたため、増加分は6基となった。
□中国とパキスタンで各2基が営業運転開始、中国は世界第4位を維持
中国では、福清4号機(福建省)と陽江4号機(広東省)が営業運転を開始したことにより、中国で運転中の原発は2期増えて合計37基、3566万キロワットとなり、3年連続で世界第4位の座を保った。
2050年までに総発電電力量に占める原発比率の25%拡大目標を掲げているインドでは、同国南端にあるクダンクラム2号機が、ロシアでは、モスクワ南部約500kmに、第3世代プラスの性能を有するという120万キロワット級シリーズの初号機となるノボボロネジⅡ‐1号機が、それぞれ営業運転をスタートさせた。
また、アルゼンチンのアトーチャ2号機(ブエノスアイレス北西115km)が、全面運転許可を取得した一昨年5月に、営業運転を開始していたことが、今回の調査で明らかとなった。
□アジア4ヵ国で5基が着工、世界で建設中の原子炉は63基、約6700万キロワット
2017年中、5基、520万キロワットの原発が着工し、世界で「建設中」の原発は合計で63基、6740万6000キロワットとなった。
新たに着工した5基はいずれもアジアの4ヵ国。依然としてアジア地域の開発の活発な状況が顕著となっている。インドのクダンクラム3,4号機、韓国の新古里5号機(釜山)、バングラデシュのルプール1号機(ガンジス川流域)で初のコンクリート打設が実施され、また、中国が独自の技術で開発した高速実証炉(60万キロワット)が着工した。
一方、「建設中」であった米国のバルージ・C・サマー2、3号機の2基の建設中止が決定されたことで、「世界の原発開発動向」では、「建設中」から削除。台湾で「建設中」の龍門1号機が一昨年からすでに密閉管理状態、同2号機が建設作業凍結となっていたため、これら2基を「建設中」の集計から除外した。また、前回調査で「建設中」であった7基が順調に営業運転を開始したことで、「建設中」は前回実績から6基、549万1000キロワット減少した。
□インドとパキスタンで3基が計画入り、世界で89基、9994万4000キロワットが計画中
今後、新設計画の進展が見込まれる原発は合計89基、9994万4000キロワット。この数値は昨年に2ヵ国で3基、310万キロワットが計画入りした一方、「計画中」から「建設中」のカテゴリーに5基が移動したことに加え、3ヵ国で7基の新規建設計画が中止されたことで、前回実績から9基、1122万キロワット減少した。
新たに計画入りした3基のうち、インドではⅢ期糀となるクダンクラム5、6号機の建設計画について昨年6月、インドとロシアが一般枠組み協定と政府間信用議定書に調印。ロシアの技術を採用してプロジェクトを実施段階に移行することが確認された。パキスタンでは昨年11月、チェシュマ5号機(100万キロワット級)の建設計画について、パキスタン原子力委員会と中国核工業集団公司が建設協力協定に締結した。