「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)」が7日に閣議決定された。この白書は、エネルギー政策基本法第11条に基づき、政府がエネルギーの需給に関して講じた施策の概況について国会に提出する報告書。例年、エネルギー動向、前年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の状況について記載しており、これらに加え、今回の白書では、福島復興の進捗、カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、エネルギーを巡る不確実性への対応について紹介している。
エネルギーを巡る不確実性への対応について、2021年、世界各地で電力需給がひっ迫し、その要因には、2015年以降、原油価格低下で化石投資が停滞し、脱炭素の流れも重なって供給力不足が深刻化したことがあげられる。また、新型コロナからの経済回復で各国需要が増大する中で悪天候・災害が重なって風力等の再エネが期待通り動かなかったこと等がある。
新型コロナからの経済回復の過程で、世界のガス火力依存度は上昇し、こうした中で、欧州では2021年初頭の寒波で暖房需要が増加し、域内ガス在庫を取り崩した(例年比2割減)。欧州が世界で天然ガス、さらに原油、石炭を買い求めたこと等により価格は急上昇し、ロシアのウクライナ侵略で価格上昇はさらに加速した。
欧州は、化石燃料をロシアに大きく依存し、ロシアのウクライナ侵略は、欧州のエネルギーにとりわけ大きく影響している。
量について、2021年中頃から年末にかけて露国営企業ガスプロムの欧州向け天然ガス輸出量が減少した。
価格については、ガスプロムの長期契約の価格決定方法は、天然ガスのスポット価格連動が大半で、このため、天然ガスのスポット価格の応答が欧州の長期契約分の高騰に直結している。
新型コロナからの経済回復に、世界的な天候不順、災害、化石資源への構造的上流投資不足が複合的に重なり、天然ガスをはじめ化石燃料価格が急上昇し、ロシアのウクライナ侵略で、価格上昇が加速している。
化石燃料の輸入価格も急上昇し、英、蘭、独で2倍強となっている一方、日本は、いずれの資源も2倍以下にとどまっている。
カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応について、期限付きカーボンニュートラル宣言国は、2021年11月のCOP26終了時に154ヵ国・1地域に拡大し、気候変動対策は、高い目標を競うだけでなく、いかに目標達成するかの実行段階に突入している。
金融面では、気候変動情報開示を上場企業等に法的に求める「ルール化」が進展し、政策面では、脱炭素社会のエネルギー構造に各国が支援具体化している。
エネルギーを巡る情勢は各国で千差万別であり、各国の事情を踏まえた現実的な脱炭素の取組が、世界全体の実効的な気候変動対策にもつながる。
福島復興の進捗については、東京電力福島第一原発の廃炉の完遂と福島の復興は経済産業省の最重要課題となっている。
事故後11年が経過し、一歩一歩取組は進展するも、中長期的な対応が必要な残された課題に、国が前面に立って着実に取り組んでいく必要がある。