農研機構は、世界に先駆けてロボット・自動化農機の安全性の確認に主眼を置いた検査方法・基準を策定し、農林水産省や農機メーカー等との協議を経て、2018年から公的制度である農業機械安全性検査として実施してきた。その実績が海外からも高く評価され、今回、ロボット農機の安全性に関する国際規格「ISO 18497:2024」の発行に際し、農研機構が策定したロボット・自動化農機検査の主要な実施方法と基準が掲載された。将来的に安全性が高いロボット農機の国際的な普及促進が期待される。
「ロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準」を策定
2018年にISO(国際標準化機構)でロボット農機の安全性に関する国際規格「ISO 18497:2018(農業機械類及びトラクタ ― 高度に自動化された農業機械の安全 ―)設計原則」が策定・発行された。この国際規格は、ロボット農機全般を対象とした安全、または安全装置の要件を記載した規格だったが、具体的な性能や安全性の評価方法等を示したものではなかった。
一方、日本では2017年に農林水産省が、リスクアセスメントの実施など安全性確保の原則、関係者の役割等についての指針を示した「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」を策定したことにより、2018年からほ場での有人監視下で運用されるロボットトラクターの本格的な市販化が世界に先駆けて始まった。
農研機構では、その際に、農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン、ISO 18497:2018を参考に、より具体的な「ロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準」を策定し、2018年からロボットトラクター、2020年からロボット田植機の安全性を公正・中立な立場から検査・認証してきた。
ロボット農機の検査方法・基準がISO規格に掲載
現在、ISO 18497:2018の発行当初に比べ、AI(人工知能)やGNSS(衛星測位システム)、人・障害物検出センサーなどといったロボット農機に使われる技術は大きく進歩した。これらの技術を使った新しいロボット農機に対応した、より詳細な安全要件や性能、安全性の評価方法を定める必要性から、2021年6月からISO TC23(農林業用トラクター及び機械を扱う専門委員会)/SC19(農業用電子設備を扱う分科委員会)/WG8(安全と保安を扱う作業グループ)にて、ISO 18497:2018の改訂作業が開始された。
農研機構は、TC23/SC19/WG8に担当者をエキスパートとして派遣し、規格内容を協議する国内審議団体である(一社)日本農業機械工業会のロボット農機分科会の協力を得て、安全性の検査方法・基準の国際規格として、既に検査実績がある農研機構の「ロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準」を改訂版のISO 18497:2024に掲載することを提案した。
その後、TC23/SC19/WG8での協議において、農研機構が世界に先駆けてロボット農機の安全性確認に主眼を置いた検査を実施し、既に数多くの認証を行っているという実績が高く評価され、ロボット農機の検査方法・基準が、国際的な基準であるISO規格に掲載されることとなった。
これまでに実施してきた検査・認証の実績が世界中に
国際規格に掲載されることで、農研機構がこれまでに実施してきた検査・認証の実績が世界中に周知される。今後、海外の農機メーカーが、日本向けのロボット農機の製造・販売を検討する際に、農研機構の検査方法・基準が考慮されることや、日本の農機メーカーによるロボット農機輸出への貢献が期待される。
農研機構では、今後も国内外の農業の発展のため、ロボット農機の安全性検査方法・基準の開発と国際標準化に取り組んでいくとしている。