農研機構と(株)ササキコーポレーションは共同で、水田のあぜ道などで使えるリモコン式の電動式草刈機を開発した。この電動式草刈機は、排ガスを出さずに、水田のあぜ道や路肩などの整備された斜面での草刈り作業を無線リモコンによる遠隔操作で行うことができる。さらに、一定条件下のあぜ道では、あぜ道に沿った自動走行も可能だ。現在使用されている刈払い機や草刈機と比較して、作業の大幅な軽労化、飛び石や作業機の反発等の危険回避による安全性の向上が期待できる。今後、平成30年度の市販化に向け、稼働時間の拡大や耐久性など量産化に向けた検討が進められる。
求められていた作業の軽労化
一般的に、田のあぜ道などの除草作業は、エンジン式の刈払い機(肩掛け式・背負い式)や、エンジン式の草刈機(自走式)を人が直接操作して行う。しかし、雑草の生育が旺盛な夏季の高温期などに数日間連続して繰り返し作業を行わなければいけないことから、作業者の労働負担が大きく、軽労化が求められてきた。
また、刈払い機や自走式草刈機には、高速回転する刈刃が使われている。このため、飛び石や作業機の反発等による危険が伴い、作業者はエンジンの振動を直接受けることや排ガス、作業時に発生する土埃等にも曝されることから、作業環境の改善も必要となっていた。
そこで、農研機構では、(株)ササキコーポレーションと共同で、リモコンによる遠隔操作で水田のあぜ道や路肩の斜面の草刈り作業が行える、電動式草刈機を開発した。また、研究では、岩手県の協力を得て、現地実証試験も行われた。
開発機の特徴・長所
今回開発され電動式草刈機は、水田や転換畑において、あぜ道や路肩などの整備された斜面での草刈り作業を、無線リモコンによる遠隔操作によって行える。
また、この開発機は、あぜ道(上面幅50cm以上)、斜面(傾斜角32度以下)における草刈り作業が可能だ。さらに、途中に石や溝、杭、廃棄物等の障害物が無く、比較的平坦で直線的かつ十分な強度を持つあぜ道(上面幅約50cm以上、高さ30cm以上、斜面部分の傾斜角60度程度)では、あぜ道に沿った自動走行が可能となっている(ただし、スタート・ストップの指示は必要)。
開発機と現在一般的に使用されている草刈機を比較してみても、刈取精度や作業速度は同等となっている。また、作業者は遠隔操作により機体から離れて作業できるため、飛び石や作業機の反発等を受ける危険性が減少する。加えて、岩手県における実証試験では、遠隔操作での作業の際、市販機よりも作業者に与える騒音・排ガス・振動の影響が小さいことが確認された。
平成30年度の市販化へ検討を推進
開発機は、遠隔操作や自動走行機能を備えていることから、草刈り作業における作業負担の軽減や作業環境の改善(安全性の向上)が期待できる。
また、平成30年度の市販化を予定しており、今後、実用性の向上に向け、市販機の稼働時間を拡大するため、バッテリ等の改良を検討することとしている。