(株)IHIアグリテック、農研機構、福島県農業総合センターは、リモコン操作で1mを超える雑草の繁茂した急勾配法面で作業を行うことができるハンマーナイフ式の草刈機を開発した。
開発機の外観(プレスリリースより)
急勾配法面における草刈作業は、刈払機を用いて人手により行われる場合が多く、法面での作業となるため姿勢が不安定で、作業中の転倒・転落事故が多く発生している。また、中山間地域は平地に比べて法面等耕作地周辺の面積割合が高く、その管理作業が生産者の大きな負担となっており、作業者が安全な場所から効率的に草刈作業を行える草刈機の開発を求める声が高まっていた。
今回開発された草刈機は、現地試験等において、市販の草刈機(リモコン式、歩行型、刈払機)の2倍以上の作業能率で草刈りを行うことができた。
開発機は、2022年6月よりIHIアグリテックより市販(台数限定)が開始される予定だ。
高まる作業の省力・軽労化に関する開発・実用化の要望
近年の急勾配法面等の草刈作業における労働力不足の深刻化に伴い、中山間地域の草刈作業の機械化に関して様々な研究開発を行ってきた農研機構には、生産現場から改めて作業の省力・軽労化に関する開発・実用化の要望が寄せられていた。
このため、過去に蓄積された研究開発の知見を基に、IHIアグリテック、農研機構、福島県農業総合センターからなるコンソーシアムが結成され、2019年から農業機械技術クラスター事業として実用化に向けた共同研究が進められてきた。
開発機の特徴・強み
今回開発されたのは、リモコンで操作するハンマーナイフ式の草刈機。主に草刈部、走行部、操作部で構成されている。
走行部はクローラ式で、左右で独立した合計2個の油圧モータで駆動している。油圧式無段変速機(HST)により車速を0~1.4m/sで調整し、左右の信地旋回、超信地旋回を行うことができる。
草刈部は、ハンマーナイフ式で、1個の油圧モータで駆動する。また、電動シリンダで刈刃高さを20~200mmの範囲で調節することができる。
操作部は、IP65防塵防水仕様のリモコン(周波数2.4GHz)が用いられており、100m以上離れた場所からエンジンの始動、停止、前進・後進・旋回、草刈部の上下、非常停止等を行うことができる。
機体の大きさは1683×1105×690mm、質量は346kgで、軽トラックや商用バン等でも運搬することができる。
最大適応傾斜角は45度。これを超える勾配でも作業可能な場合があるが、搭載するガソリンエンジン(10kW)は、全方向最大45度までの勾配で運転が保証されている。
草刈作業は、開発機を法面の等高線に沿って走行させて行い、法面端で旋回させて次行程の作業に入る。この動作を繰り返すことで、連続作業が可能となる。
香川県と福島県で実証試験
香川県善通寺市で行われた試験では、平均斜度36度(最大38度)の急勾配法面において、草丈74cmの条件で、市販リモコン草刈機の2倍程度の能率で作業できることが確認された。
また、福島県相馬郡飯舘村で行われた試験では、平均斜度36度(最大43度)の急勾配法面において、草丈155cmの条件で、市販の歩行型草刈機の2倍以上の能率で作業できることが確認された。
法面以外では、茎が硬く草丈の大きなセイタカアワダチソウ(草丈136cm)が群生する平坦ほ場において、刈払機による人力作業の2倍以上の能率で作業が行えることが確認されたほか、つる性雑草のクズが繁茂した平坦なほ場でも作業を行えることが確認されている。