愛知県内で複数の介護施設を運営するメグラスは12日、利用者やその家族らによる職員への言動を3段階に分類する「スタッフプロテクション制度」の企画・導入を発表した。ハラスメントに該当する事案が発生した場合は、スタッフが自ら社内に設けられたホットラインで報告。内容を踏まえて関係者が連携し、速やかな事実確認と対応に着手する。同社は制度を通じて職員を守り、定着率の向上などを図る考えだ。
今回の制度では、利用者やその家族などによるスタッフへの言動を、「青:正当なご指摘」「黄:過剰なご要望」「赤:ハラスメント」の3段階に組み分ける基準マニュアルを作成。例えば暴言の場合、「回数が週2回以下」や「注意することでやめる」などは青色、「『バカ』、『ヘルパーの分際で』、『死ね』などが週3回以上」などは黄色、「止めてもやめず、説明も聞き入れない」や「業務に支障がある」などは赤色に仕分ける。このうち、報告や対応の対象となるのは、黄色と赤色のケースだ。マニュアルにはほかにも、「同じ要求を何度も繰り返す」や「権威的態度・説教」といったハラスメントにつながりやすい言動についても基準を設けている。
介護現場では、身体的・精神的暴力やセクシャルハラスメントの存在を「当然だ」という認識が常態化していた。ただ、退職者が続いたことによりメグラスは今年1月、施設で働く職員を中心としたプロジェクトを発足。プロジェクトメンバーによる調査や議論を踏まえ、4月に制度の完成を迎えた。すでに4月1日から15日までで、黄の事案1件と赤の事案1件が報告され、フロー通りの対処に至ったという。
三菱総合研究所が2018年度に公表した実態調査によれば、対象となった2155の介護事業所のうち、半数以上が「1年以内にハラスメント発生を把握している」と回答。さらに、利用者や家族からハラスメントを受けたことでケガや病気になった介護職は約2割、仕事を辞めたいと思った介護職は約4割に上っていた。
厚生労働省は今年度から、労働環境の改善や人材確保を目指し、施設や事業所に向けたハラスメント対策を強化。全てのサービスの運営基準に、「必要な措置を講じなければならない」と対策実施を義務付ける一文を書き加えた。具体的には、相談体制の整備や再発防止に向けた研修を行うほか、既存の手引きを参考にした取り組みを行うよう促している。