国立研究開発法人国立がん研究センターの社会と健康研究センター予防研究グループが実施した多目的コホート研究結果を分析した結果、ピーナッツ摂取量が循環器疾患及び脳卒中(特に、脳梗塞)の発症リスク低下と関連することを明らかになった。
ピーナッツは、不飽和脂肪酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維などを多く含んでおり、欧米諸国の先行研究では、ピーナッツの摂取が循環器疾患の予防に有効であることが報告されている。
しかし、日本人ではピーナッツの摂取は欧米に比べて少なく、これまで循環器疾患との関連については報告がなく、よくわかっていなかった。今回の研究では、ピーナッツの摂取量と脳卒中(脳出血、脳梗塞)および虚血性心疾患発症との関連を検討した。
がん研の研究グループは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っている。
平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内に住む45~74歳のうち、食事アンケート調査に回答し、循環器疾患やがんになっていなかった約7万5千人を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、ピーナッツの摂取量と脳卒中および虚血性心疾患発症リスクとの関連を調べ論文発表した。
研究では、食事アンケート調査のピーナッツ・落花生の摂取状況から1日あたりの摂取量を算出し、少ない順に並べて人数が均等になるよう4つのグループに分け、最も摂取量が少ないグループを基準として、その他のグループのその後の脳卒中や虚血性心疾患の発症リスクを調べた。
分析では、年齢、性別、地域、喫煙状況、飲酒量、身体活動量、精神的ストレス、野菜、果物、魚、大豆製品、食塩、エネルギー摂取量、体格、高血圧既往、糖尿病既往、高コレステロール血症の服薬を統計学的に調整した。
リスク低下率は脳卒中16%、脳梗塞20%、循環器13%
追跡期間中に3599人が脳卒中を発症し、849人が虚血性心疾患に罹患した。ピーナッツ摂取量が多いほど、脳卒中、脳梗塞、循環器疾患の発症リスクが低く、最も少ないグループに比べて、最も多いグループでは、脳卒中で16%、脳梗塞で20%、循環器疾患で13%において発症リスク低下との関連がみられた。一方で、ピーナッツ摂取量と、脳出血と虚血性心疾患との関連は確認されなかった。男女別に分けた解析でも、結果に大きな違いはなかった。
欧米の先行研究では、虚血性心疾患の発症リスク低下との関連が報告されているが、今回のがん研の研究グループの研究では関連がみられなかった。理由としては、欧米と比べて、ピーナッツの摂取量が少なく、虚血性心疾患の発症者が多くないことが考えられる。
ピーナッツ摂取量と循環器疾患の発症リスクとの関連について、アジアからの報告は今回の研究が初めて。日本を含めたアジアにおけるピーナッツ摂取の健康影響については、さらなる研究の蓄積が必要だろう。