ヘルスケアなどライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業ドイツ・バイエル社と埼玉県和光市の理化学研究所が設立した理研鼎業が、お互いの強みを活かしたイノベーションの共創を目的としたパートナーシップ契約(共創契約)を締結した。
バイエル社と理研鼎業は、今回の契約により、創薬基盤技術やモダリティの創出、また、理研の研究からもたらされる疾患メカニズムに関する知見を活用した新規病態メカニズムの解明、革新的な創薬標的を探索していく。両社は研究会議を開催し、理研の研究者による研究実績紹介をベースに議論。さらに経営者間でも中長期の観点から研究構想と社会実装に向けて意見交換を行っていく。
バイエル社は、これまで細胞治療やゲノム編集などに関するジョイントベンチャーの設立や、日本の大学を含むアカデミアと包括的な連携を結ぶなど、オープンイノベーションの促進に積極的に力を入れてきた。
バイエル社の医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者のヨルグ・メラー氏は、「世界の患者さんに向けて新しい治療オプションを創薬し開発するには、産業界とアカデミアのパートナーとの連携が鍵となる。世界的にトップクラスの国立研究機関である理研とイノベーションを共創できることは大変名誉なこと」と述べ、「このたびの連携は、科学を発展させ、重篤な疾患に苦しむ患者さんの役に立つと確信しています」と期待感を表明している。
理研の松本理事長は、「今回のパートナーシップは、100年以上日本でヘルスケア事業を展開してきた国際企業のバイエル社と理研の研究者が連携することで、バイエル社の創薬や社会実装活動へ理研の基礎研究成果を組み合わせようとの試み。新たに設立された理研鼎業がバイエル社と理研間の調整と推進役を果たします」と述べた。
また、理研鼎業の油谷好浩代表取締役は「理研鼎業は産学連携に関する業務を担う理研の外部法人として、理研からの受託により、研究成果の社会還元、産業界との連携などの業務をより促進・発展させることを目的に、今年9月5日に設立された。このたびの連携は、産とアカデミアの両者間での組織と組織によるさらなる大型産学連携に向けての第一歩となる意義あるもので、理研と協力して鋭意推進します」と抱負を語っている。
※(株)理研鼎業(ていぎょう)
国立研究開発法人理化学研究所の全額出資により設立された。理研と密接に連携・協業し、研究成果をいち早く社会的価値に還元すべく産学連携に関する業務を担う、理研の外部法人。理研鼎業が実施する共創業務では、自然科学の総合研究所である理研の広範な研究分野において、基礎から応用までのカバーする多彩な研究者による研究成果等をプラットフォームとして活用することにより、企業や社会が抱える課題の解決に向け、さまざまな方策を共に創出することを目指している。
※バイエル社
世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートすることで、人々の生活に貢献している。同時に、収益力を高め、技術革新と成長を通して企業価値を創造することも目指している。また、バイエルは、持続可能な発展に尽力し、バイエルブランドは、世界各国で信用と信頼性および品質の証となっている。グループ全体の売上高は396億ユーロ、従業員数は11万7千名。設備投資額は26億ユーロ、研究開発費は52億ユーロ。