介護保険によるレンタルが新たに認められた自動制御の機能を持つ電動歩行器。23日まで大阪で開催されていた福祉機器などの展示会「バリアフリー2016」では、メーカー各社が最新のモデルを披露して関心を集めた。先行しているのは幸和製作所、RT.ワークス、カワムラサイクルの3社で、ナブテスコも追随する構えをみせている。
バリアフリー2016が開催されたインデックス大阪
上り坂ではアシスト、下り坂ではブレーキ。これをセンサーやモーターなどが自動で行うのが、新たな電動歩行器の最大の特徴だ。つまづきなどによる急発進を検知し、すぐにストップをかけて転倒を防ぐ機能もある。有効性を審査してきた厚生労働省は今月14日、福祉用具貸与の対象として正式に位置付けた。利用者の外出機会を増やしたり、出かけられる距離を伸ばしたりして、歩く力を維持する効果もあるとみられている。
《 幸和製作所「リトルキーパス」》
当面の市場で存在感を発揮しそうなのは4社。動きが早いのは幸和製作所だ。最新のテクノロジーを搭載した「リトルキーパス」を投入済みで、すでにレンタルに至った例もあるという。「バリアフリー2016」では、よりコンパクトで小回りが利く「リトルキーパスS」を発表。6月末にも売り出す予定とし、「業界最小」「小さな頼れるパートナー」などとPRしていた。
《 RT.ワークス「ロボットアシストウォーカー RT.2」》
幸和製作所に技術の一部を提供しているのがRT.ワークスだ。自社でも「ロボットアシストウォーカー RT.2」をつくり、「バリアフリー2016」で先行展示した。発売は7月の予定。
昨年にリリースした「RT.1」がベースで、保険適用に向けて機能を減らしシンプルにしたという。デザインにもこだわり、バスケットのカラーバリエーションは複数用意。営業部の担当者は、「皆さんに『これを使いたい』『かっこいい』と思ってもらえるように開発した」と話している。
《 カワムラサイクル「フラティア」》
カワムラサイクルの「フラティア」は、スーパーの買い物かごを安定して置ける設計がセールスポイントのひとつ。からだが離れただけで停止する仕掛けにより、安全性をさらに高めた。現在は一部の事業所に限って販売しつつ、最適なアフターサービスなどのためにノウハウを蓄えている。本格的に展開するのは夏以降になるとした。
《 ナブテスコ「FLAGSHIP モデル ES‐03」》
(2015年の「国際福祉機器展」で撮影)
趣向が大きく違うのは、ナブテスコの「FLAGSHIP モデル ES‐03」。流線型のモダンなフォルムが独自色を際立たせている。まだ完成形ではなく、今後さらに改良を重ねていくという。担当者は、「他とは異なる発想で仕上げ、新たな価値を生み出していければ」と説明。別の機種を用意する構想もあると話した。秋ごろにより具体的な計画を明らかにする予定だ。
一方で、今のところ電動歩行器を扱っていない企業も多い。他のメーカーのブースを回ると、「本当にニーズがあるのか疑問」「安全面の心配はないのか」「室内などでは重くて使いにくい」といった声も聞かれた。
■ 各メーカー、介護保険の動向を注視
どこも共通しているのは、介護保険をめぐる議論を注視しつつ戦略を練っていること。政府は現在、軽度者に対する給付をさらに縮小する案を俎上に載せており、福祉用具貸与もターゲットのひとつにあげている。財務省はこれまで、要介護2以下を原則として自己負担の仕組みに変えるべきだと求めてきた。改革の中身が固まるのは年末。その頃に業界は大きな曲がり角を迎えるかもしれない。