筑波大学生命環境系の谷口俊介准教授(下田臨海実験センター)らの研究グループは、日本産バフンウニのゲノム配列を解読。ゲノム情報のデータベースでの公開を開始した。データベース訪問者は、それぞれの研究や教育の現場において、全てを自由に活用できるようにしている。また、情報は今後の追加解析により更新し続けていく方針だ。
研究材料として長い間利用
バフンウニは北海道南端から南の海岸線でよく見られるウニの一種で、地域によっては貴重な漁獲対象物となっている。ウニは日本人にとって有用な海産食材であるとともに、磯遊びなどでよく目にするなじみ深い動物の一種。また、採集がしやすく、卵や精子の取り出しやすさから、発生生物学、細胞生物学などの優れた研究材料としてだけでなく、動物の発生を学ぶ教育現場においても、わが国では長い間利用されてきた。
ゲノム・遺伝子配列の情報が必須である現在の生物学においては、2006年に北米産のアメリカムラサキウニのゲノム配列が公表されてから、その情報をもとに研究が発展してきた。日本でのウニ研究において主に使用されるバフンウニや、ヨーロッパにおけるヨーロッパムラサキウニのゲノム情報はこれまで報告がなく、種の違いによるDNA配列の違いが、時に研究進行上の妨げになってきた。
谷口筑波大准教授は、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所遺伝情報分析研究室池尾一穂准教授、金城その子研究員、お茶の水女子大学湾岸生物教育研究センター清本正人准教授、広島大学大学院理学研究科山本 卓教授との共同研究を進めている。
今回解析に成功したバフンウニのゲノム情報は、1)ホーム、2)遺伝子検索(特定の遺伝子を遺伝子名、遺伝子IDなどから検索可能)、3)ホモロジー検索(特定の遺伝子配列を基に、類似の配列を持ったゲノム配列、遺伝子配列を検索できる)、4)ゲノムビューアー(ゲノム内における特定の遺伝子の位置などゲノム構造を見ることができる)、5)データ(解析に用いたシーケンスデータなどをダウンロードできる)、6)プロトコル(バフンウニを用いた実験手法をダウンロードできる。また、研究者は地震の実験手法を自由にアップロードできる)―の6項目で構成するデータベースで公開している。
日本を含むアジア地域において生息するバフンウニのゲノム配列が明らかになり、誰もが利用できるデータベースになったことは、発生生物学・細胞生物学だけでなく、進化生物学分野においても、利用価値が高いものになった。
全ての研究者の利用に配慮
また、今後シーケンス技術の発展により、誰もが好きな生物のゲノム情報などを簡便に取得できる時代が来ることは確実。その際に、シーケンス情報の羅列をデータとして残すだけでなく、全ての人が利用できるデータベースの形として残すことが重要になってくる。
サンプルおよびデータの取得・解析・公開までの一連の流れが、未だゲノムが解明されていない実験対象動物において展開することが期待される。
また、今回の研究のゲノム解析で精子を利用したオスの子孫が、筑波大下田臨海実験センター及びお茶の水女子大湾岸生物教育研究センターにおいて維持されているため、それらを用いた研究や教育が展開することが期待される。