国土交通省は1日、九州北部豪雨で甚大な被害を受けた河川で、「九州北部緊急治水対策プロジェクト」として、再度災害の防止・軽減を目的に、今後概ね5年間(平成34年度目途)で緊急的・集中的に治水機能を強化する改良復旧工事等を河川事業・砂防事業が連携しながら実施するとともに、洪水時に特化した低コスト水位計の設置、浸水実績や地形情報等を活用した街づくりの検討を支援することを発表した。
九州北部豪雨では、7月5日の昼頃から夜にかけて強い雨域がかかり、筑後川、遠賀川、山国川の流域で短時間に記録的な雨量を観測。筑後川右岸流域の河川では、堤防決壊等による浸水被害に加えて、大量の土砂・流木を伴う甚大な被害が発生した。
同プロジェクトの全体事業費は約1670億円で、事業内容は堤防整備、河道掘削、護岸整備、砂防堰堤など。
実施河川は、国管理河川が筑後川水系筑後川・花月川、遠賀川水系彦山川、山国川水系山国川で、県管理河川が筑後川水系桂川・北川・白木谷川・赤石川・大肥川・小野川などとなっている。
主なポイント
プロジェクトの主なポイントとして、①河川・砂防・地域が連携した復旧、②様々な事業・制度を活用した迅速な復旧、③危機管理型水位計の設置とリスク情報の活用があげられる。
このうち河川・砂防・地域が連携した復旧においては、大量の土砂や流木等により甚大な被害が発生したことを踏まえ、一定程度の降雨に対し、山地部では土砂・流木の流出を防止する砂防堰堤等の整備、河川上流では、土砂・流木を補足する貯留施設の整備、洪水・土砂を下流まで円滑に流す河道の改修・河道形状の工夫を実施し、土砂・流木を伴う洪水氾濫を防止する。
また、地域と一体となって、今回の災害と同規模以上の降雨に対してさらに安全性を高めるための検討を実施する。
様々な事業・制度を活用した迅速な復旧においては、土砂・流木等で大規模に施設が埋塞した筑後川水系赤谷川流域、白木谷川流域と北川流域の災害査定において、埋没した公共土木施設について掘り起こすことなく「全村」として扱うことで、災害復旧への着手が大幅に迅速化する。また、これら埋塞した河川で災害復旧事業(一定災)を初めて活用し、査定設計書の作成などの事務手続と地方負担を軽減する。
さらに、国が赤谷川上流部等に土砂、流木の流出を防止する砂防堰堤を整備するとともに、筑後川視線の整備と一体となって筑後川本川の整備を実施することで、被災地の復旧を迅速化する。
危機管理型水位計の設置とリスク情報の活用においては、九州北部豪雨では、洪水時に河川の状況をリアルタイムに把握できなかったことに加え、事前の想定とは異なる現象によって被害が発生。このため、洪水に特化した低コストの水位計(危機管理型水位計)の設置を推進するとともに、浸水実績や地形情報等を活用したまちづくりの検討を支援する。