インターネットでの誹謗中傷が社会問題となっているなか、悪質な侮辱行為に対処するために、侮辱罪の厳罰化を盛り込んだ刑法改正が行われたが、17歳から19歳の若者の約8割が、侮辱罪の改正に賛意を示していることが、日本財団の意識調査でわかった。ネットでの誹謗中傷を実際に行ったことがあるのは約2割程度だった。
8割を占めた「賛成」の理由としては、「誹謗中傷により傷つく人や命を絶つ人が少なくなる」が最も多く65%の男女が回答。61%が「厳罰化することで、誹謗中傷の重大さや責任に気付ける」、58%が「悪質な書き込みの抑制が期待できる」と答えた。
一方で、厳罰化に反対した若者の意見としては、「表現の自由、批判の自由に反する」「厳罰強化よりもモラルや教育が必要」「厳罰を強化しても誹謗中傷は減らない可能性がある」が上位を占めた。
厳罰化でも誹謗中傷「増える」は5割
さらに、厳罰化が誹謗中傷の数に及ぼす影響としては、全体では誹謗中傷が「減る」と約4割が答え、約5割は厳罰化でも誹謗中傷が「増える」、もしくは「変わらない」とした。男性よりも女性のほうが「減る」との回答者の割合が高かった。
誹謗中傷が増えると思う理由としては、「人の考えや感情は変わらない」「匿名性のため」「バレない・自分は大丈夫だと思う人がいる」というコメントが多数聞かれた。また、誹謗中傷する人は気にしないという意見や、実際に刑罰が下される例が少ないといった声も寄せられている。
誹謗中傷が「減る」と思った若者に理由を聞くと、「罰を受けたくない」「前科が付く」「損害賠償を支払う可能性がある」「法律違反をしたくない」といったことをあげた。さらに、投稿前に考えるようになる、抑止力になると、厳罰化の意義を認める回答もあった。
中傷内容、半数が「覚えていない」
調査では、誹謗中傷の経験に関しても聞いた。他人に対する誹謗中傷を目にしたことがあるのは、男女全体では約7割。性別では女性が男性よりも他人に対する誹謗中傷を目にしたことがあるとの回答した人の割合が高い。女性74.9%、男性66.5%。自分に対する誹謗中傷に関しては、男女とも約2割が「目にしたことがある」とした。誹謗中傷を目にした媒体としては、男性はツイッター、ユーチューブ、掲示板サービス(2ちゃんねる等)、女性はツイッター、ユーチューブ、ティックトックの順。
また、誹謗中傷を書き込んだ・発信した経験が「ある」と回答したのは、全体で約2割にのぼった。このうち半数以上は具体的な内容を覚えていないという。性別では男性(10.9%)のほうが女性(9.7%)よりも「経験がある」と回答した割合が高い傾向がみられた。
幅広い年齢層への教育が必要
これらの調査結果を踏まえて、日本財団では、厳罰化による抑制効果に期待感を示すものの、厳罰化が広く周知されないと、抑止力になり得ないと指摘。また、厳罰化をしても、表現や個人を特定されないような工夫をした誹謗中傷が増える懸念が若者から示されたことを踏まえて、各サービス事業者による見えづらい被害を可視化するような工夫の必要性を強調している。
さらに、インターネットやSNSの拡がりに伴い、誹謗中傷の投稿者の年齢層も小学生から高齢者まで幅広いことに注目。8割以上の若者がネットリテラシーを学んだことがあり、うち6割はネットリテラシー教育が役立っていると感じていることから、幅広い年齢層に対する教育を求めている。