国土交通省では、土地利用状況や災害リスク情報など、国土に関する基礎的なGISデータを「国土数値情報」として整備し、オープンデータとして公開している。国土数値情報を取り巻く環境変化と、国土数値情報の利活用や整備・マネジメントの現状を整理し、今後の目指すべき姿・果たすべき役割と方向性を検討することを目的とした有識者検討会(座長:瀬戸寿一駒澤大学准教授/東京大学特任准教授)を設置し、令和5年10月から6年7月にかけて7回の検討会を開催し、議論を行い、7月25日に最終とりまとめを公表した。
最終とりまとめでは、今後の国土数値情報の方向性として、引き続き、社会の重要なインフラデータとしての機能を果たすため、国土の基礎堤な情報(位置・属性)を一定の精度を担保して整備し、広く提供していく。さらに、今後のデータ活用社会に貢献すべく、ニーズを把握し、新たなユーザーを取り込みながら、より開かれた・使われる国土数値情報へ転換を進めるとした。
これらの方向性に沿って、①ニーズ(行政・民間)の把握、②ユーザーの拡大、③効率的な整備手法・提供方法、の3つの論点から整備方針を検討し、各論点における課題と対応策を示した。
このうち、ニーズ(行政・民間)の把握では、ユーザーニーズや利用シーン、活用事例を十分に把握できていないことなどが課題とした上で、今後の対応策として、官民各主体のニーズ把握をあげた。
具体的には、ラウンドテーブル形式で意見交換を実施し有識者、民間企業等からのニーズ、利用シーンを把握。また、国、地方自治体へのニーズ調査アンケートを実施する。さらに、ユーザーのデータ整備・更新の要望や活用方法等を投稿できる仕組みをダウンロードサイト内に構築し、多様な意見が集うオープンな場を設ける。
ユーザーの拡大の論点では、課題として、新規ユーザーを拡大するための新たな取り組みが実施できていないことなどをあげ、今後の対応策として、新規ユーザーの利用促進に向けた取組、商用利用に向けた取組、効果的な情報発信を求めた。
このうち、新規ユーザーの利用促進に向けた取組として、データサイエンティスト等の参加を募ったデータ活用コンペ等の開催、ベースレジストリとしての位置づけに向けた検討、自治体職員や市民への周知を行う。
商用利用に向けた取組としては、商用利用不可・公開不可データをオープンデータ化するための原典保有者との調整を図る。
効果的な情報発信では、整備計画、活用事例等の発信、SNS等の活用に取り組む。
効率的な整備手法・提供方法では、原典資料がGISデータ化されていないことが効率的な整備を阻害していることなどを課題としてあげた。その上で、①原典資料のGISデータ化の支援、②データ整備・更新の判断基準となる評価軸の設定、③新たな技術の活用、④アクセス性向上、⑤ダウンロードサイトの仕組みの改善‐を今後の対応策として掲げた。
このうち、原典資料のGISデータ化の支援では、ガイドライン等の作成・普及を所管省庁と連携して実施する。
データ整備・更新の判断基準となる評価軸の設定では、信頼性等の評価軸を設定して総合的・合理的に判断できる仕組みの構築を図る。
新たな技術の活用においては、AI技術の導入可能性を検討する。
アクセス性向上のため、e‐GOVポータルへの登録、メタデータへのアクセス性の向上、属性情報のわかりやすい表示を行う。
ダウンロードサイトの仕組みの改善のため、一括ダウンロードやファイル形式等での選択式ダウンロードを行う。