2025年3月21日 ナガエツルノゲイトウの防除技術を開発 繁殖・越冬する地下部まで防除可能

農研機構、千葉県農林総合研究センター、神奈川県農業技術センターは、特定外来生物に指定されており、水稲栽培で問題となる難防除雑草「ナガエツルノゲイトウ」について、水稲移植栽培期間中の防除剤体系処理による3通りの防除技術を開発した。この技術を2年間継続すると、ナガエツルノゲイトウがまん延した水田でも、栄養繁殖し、かつ越冬する地下部まで防除できる。この成果により、ナガエツルノゲイトウによる雑草害軽減とまん延防止が期待される。

 

特定外来生物に指定されている「ナガエツルノゲイトウ」の被害

「ナガエツルノゲイトウ」は特定外来生物に指定されている多年生雑草。河川や水路、水田などに侵入・定着する。国内では1989年に初めて見つかり、2024年12月現在で東北以南の26都府県で分布が確認されている。

ナガエツルノゲイトウは、節を含む茎や根からの栄養繁殖(種子ではなく根や茎などの植物体の一部分を繁殖器官とする無性生殖様式)によって増殖、まん延し、水田に侵入すると競合による水稲の減収や収穫作業の阻害を引き起こす。さらに、代かき後の落水時などに再生能力を持つ節を含む茎や根の断片が水路に流れることで、周囲に拡散する懸念がある。また、水中や暖地では葉や地上部の茎等(地上部)も枯れずに越冬することがあるが、霜が降りる地域では、通常12月以降に地上部が枯死し、主に地下茎や根(地下部)の状態で越冬する。侵入した水田での早期防除と分布拡大防止対策が求められている一方、水田におけるナガエツルノゲイトウの有効な防除技術はこれまで開発されていなかった。

 

 有効除草剤を組み合わせた体系処理により防除

今回、研究グループは、ナガエツルノゲイトウに有効な水稲用除草剤とその処理時期を明らかにし、有効除草剤を組み合わせた体系処理により本種を防除する技術を開発した。

体系処理は、2~3種類の除草剤を期間をあけて散布する方法。必要除草期間が長い雑草種では1回の除草剤散布では防除効果が不十分なため、体系処理を行うことで防除する。

今回開発された技術では、水稲移植後にピラクロニルを含む除草剤を処理し、ナガエツルノゲイトウ再生始期~草丈5cm(水稲移植約20日後)または生育期(ナガエツルノゲイトウ草丈35cm以下、水稲移植約40日後)の時期にフロルピラウキシフェンベンジルを含む除草剤を処理することで、水田に発生するナガエツルノゲイトウが防除できる。

この技術では、生産者が管理する水田において水稲栽培期間中に手取り除草などを行うことなく、ナガエツルノゲイトウの地上部の生育を慣行と比べて10%以下に抑制することができる。さらに、有効除草剤による体系処理を2年間継続すると、既にまん延している水田でも栄養繁殖し、かつ越冬する地下部まで防除ができる。

本技術により、栄養繁殖する断片を生じさせずにナガエツルノゲイトウを防除できることから、本種による水田での雑草害軽減と分布拡大防止が期待される。

 

研究担当者の声

〈農研機構 植物防疫研究部門 雑草防除研究領域 主任研究員 井原 希氏〉この研究は運搬や栽培が原則禁止されている特定外来生物が対象であり、ナガエツルノゲイトウが発生していない農研機構内の水田ほ場では試験を行うことができなかったため、ほ場試験は全てナガエツルノゲイトウが発生して困っている生産者の水田をお借りして行いました。遠方にある生産者の水田で試験場内と同程度の精度の試験を行うため、農研機構内の様々な部門、支援センター職員、コンソーシアムメンバーである県の皆様など多くの方に協力いただきました。たくさんの人が関わって開発された本技術が、ナガエツルノゲイトウに困っている生産者の皆様のお役に立つことを願っています。


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