2017年9月27日 トップマネジメントの決断と実行を イノベーション推進で経済同友会が経営行動指針

経済同友会の2016年度イノベーション・エコシステム委員会は、イノベーションに関する5年間の提言や活動のフォローアップとして、『イノベーション推進のための経営行動指針―トップマネジメントによる決断と実行を―』と題する提言を発表した。経営行動指針として、①産学共同研究の推進、②人材交流の推進、③シーズ主導のベンチャー創出、④ニーズ主導の新事業・ベンチャーによる新市場創造、⑤地域のイノベーション・エコシステム構築による地方創生―の5つのポイントを提唱している。

 《産学共同研究の推進》
産・官・学の包括的な連携協定を基軸に、研究開発の自前主義から脱却し、資金・人材・技術の新結合によるイノベーションを推進する。課題は、企業、大学の産学共同研究の取り組みが限定的なこと。同友会では、「長期大型の学際的な「組織」対「組織」の産学連携ができる体制の構築」を提言している。

 《人材交流の推進》
産・官・学の間に新たなキャリアパスを拓き、シニア層の適材適所化、コア人材の切磋琢磨、若者の採用拡大と挑戦促進を図る。課題としているのは、制度はできても大学と企業間の人材交流がほとんど進んでいないこと。同友会では、「産学共同研究を通しての相互理解、人材交流、人材育成推進」を提言している。

 《シーズ主導のベンチャー創出》
グラントやベンチャーファンドから機能的に資金を投入し、経営者視点でのアドバイスやマッチングにより事業化の可能性を常に追求する。課題としているのは、1)大学ベンチャーファンドならではのリスクをとった運用が不十分、2)各成長段階のニーズに合致したベンチャー創出支援策が不十分、3)起業者個人の財務リスクが高い、若手研究者の研究開発費が少ないこと。提言として同友会が示しているのは、1)10年、20年先を見据えた基礎研究テーマの設定と国家プロジェクト資金の確保、2)各成長段階のニーズに合致した支援策など、大学ベンチャーファンドならではの、民間のベンチャーファンドでは難しい、リスクをとった資金提供、3)米国SBIR制度のように失敗しても起業者の財務リスクの少ない支援策。

 《ニーズ主導の新事業・ベンチャーによる新市場創造》
企業の人材や技術と最先端の技術を結合し、新事業・ベンチャー企業の創出により新産業・新市場を創造する。課題は、日本は人材が大企業に集中していること。同友会では、社内人材の社外での活躍の奨励を提言している。

 《地域のイノベーション・エコシステム構築による地方創生》
地域の産業集積を中核にして、新規に立地する産・官・学を含めてクラスター化を図り、その地域ならではのイノベーション・エコシステムを構築する。課題は、地域のイノベーションの核になる大学が必要なこと。提言として、イノベーションの核になる大学、大学研究室を地方へと打ち出している。

2016年4月の未来投資に向けた官民対話において、安倍首相が「企業から大学、研究開発法人への投資を今後10年で現状の3倍(3000億円程度)に増やす」方針を表明するなど、政府等においてもイノベーション促進のための施策や環境の整備が進みつつある。

また、企業の自前主義からの脱却、オープンイノベーションの取り組み、大学との共同・委託研究拡大などに関する理解が広まり、機運も今までになく高まっている。

同友会では、今回の提言がわが国の持続的なイノベーション創出の一助になればと期待を示している。


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