総務省はこのほど、平成29年「情報通信に関する現状報告」(情報通信白書)を公表した。この白書は、日本の情報通信の現況や情報通信政策の動向について国民の理解を得ることを目的に、昭和48年から毎年作成・公表しているもの。今回は、「データ主導経済と社会変革」をテーマに、データ主導経済(data‐driven economy)の下での、多種多様なデータの精製・収集・流通・分析・活用による、様々な社会経済活動の再設計・社会の抱える課題の解決等について展望している。
スマートフォン経済の現在と将来について、近年、スマートフォン保有は急増(世帯保有率71.8%)し、PC(73.0%)や固定電話(72.2%)と拮抗しており、その利用を牽引する若年層の利用時間は、モバイルがPCの4倍超となっていることを記述。
また、スマホを通じたサービスを提供する企業側では、生成データの蓄積が進み、データ利活用による新たな価値創造の可能性があると指摘している。
スマホ関連サービスの利用について、ネットショッピングでのスマホ・タブレットの活用度合いはPCと比べると小さく、米・英の両国と比べると遅れが目立つことを指摘。
また、スマホを活用するFinTechやシェアリング・エコノミーの各種サービスについて、日本の利用者は米・英の両国と比べると利用意向が低く、その底上げが経済活性化に向けた課題としている。
白書では、今後、一気にデータ利活用が進み、今年は「ビッグデータ利活用元年」となる可能性があることを記述。企業の利活用意欲と国民の不安とのギャップを解消し、安全性とのバランスをとりながらデータ利活用の推進を図る必要があるとした。
その一方で、日本では、一般利用者側でパーソナルデータの提供と理解は8割超である一方、不安感も8割超あること、パーソナルデータ提供の許容度は公共目的が商業目的よりも高く、情報の種別によって差異が見られることなども指摘している。
さらに、個人と企業の認識ギャップが存在し、セキュリティ確保やデータ破棄の仕組みについて、特にギャップが大きいことなども記述している。
データ利活用と第4次産業革命に関する動きについて、IoT化で低コストによるビッグデータ収集が可能になることや、更に、AIによる解析で新たな価値を創出することができることを記述。「Society 5.0」の実現に向け、第4次産業革命への期待が高まっていることも取り上げている。
第4次産業革命に向けた取組について、日本企業は「検討段階」にあるものが多く、業種では、情報通信業のみ突出していることなど指摘している。
情報通信産業のIoT化について、スマホと比べ、「モノ」がインターネットにつながるIoTデバイス数が急増し、2020年時点で300億個に達する見込みであることを記述。これらの機器等をつなぐ通信技術として、5GのほかLPWAへの期待が高まっていることも紹介している。
社会的課題解決に役立つICT利活用について、我が国は生産年齢人口の減少に伴う経済の縮小を課題として抱えており、特に地方圏ではその影響が顕著になっていることを指摘。それら課題の解決に必要となる働き方改革や地方創生に、ICTが大いに利活用されることが考えられるとした。