医療・介護分野で人材派遣などを展開するツクイスタッフが、給与前払いサービス「キュリカ」を1日から導入した。
派遣スタッフの多様なニーズに対応して利便性を高め、人材を集める力を強化する狙い。働いた分をすぐに貰える、という利点を取り入れて同業他社との差別化を図る。介護業界大手がキュリカを採用するのは初めて。先行している飲食や小売、警備などの業界と同様に、これから前払い制が浸透していく可能性もある。
必ずしも次の給料日まで待つ必要はない ― 。それがキュリカの特徴だ。最短で就業当日に、自分で稼いだ額の一部をコンビニや銀行などのATMから、24時間365日、いつでも現金で引き出せる。使うのは発行無料の専用カード。働く会社にその都度申請したり、特定の口座を作ったりする手間はいらない。受け取れるのはあくまで仕事で得た分だけ。借り入れではないため金利はない。ATMの手数料として400円+税がかかる。
サービスの外販がスタートしたのは2016年。日々のやりくりが厳しい時に急な出費が生じても、前払いで貰えれば借金をしないで切り抜けられる― 。利用者にはそんなメリットもある。非正規雇用者や若者の間で利用が広がり、各業界で関心が急速に高まっている。キュリカによると、専用カードの保有者は昨年10月の時点で11万人を超えているという。
ツクイスタッフは今回、介護の現場などに派遣する人材がキュリカを使えるようにした。前払いを認めるのは6時間以上働いた日の給与。1日の勤務につき最大5000円まで、1度の引き出しで最大3万円までという制限を設けた。職種や地域、施設形態は問わない。
キュリカはこのサービスを、日本で銀行口座を開設するのに苦労する外国人の労働者にとってもメリットが大きいと説明する。取締役執行役員の尾崎亘氏は、「働き方の多様化に伴い、給与の支払いについてもフレキシブル性が求められている。人材の確保・定着に向けて介護業界でも広がっていくのではないか」と話している。