NTTドコモは12日、慶応義塾大学や東京大学と共同で、スマートフォンの日常的な使い方から持ち主の集中力を推定できる技術を開発したと発表した。活用することで、就業者のパフォーマンス向上が見込めるとしている。
働き方改革では、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現が求められている。そんな中、長時間労働を是正するためには、働く一人一人の意識改革や非効率な勤務状況の見直しにより、集中力を高めることが重要になる。
現状、人の集中力を客観的に計測するには、アルファベットへの反応で作業のスピードと正確性を数値化する検査などが知られている。ただし、実際の労働環境においては、定期的に検査を行って集中力を評価することは現実的ではない。そのため今回の研究では、この検査とスマホの日常利用のビッグデータを収集し、開発へと活かした。
具体的には、加速度などのセンサーデータ、位置情報データ、アプリの利用履歴データなど日常的に得られるデータから、人の行動やスマホの使い方を約250種類の特徴量として数値化。その数値をもとに、AIが持ち主の判断のスピードと正確性を、集中力として推定する仕組みを作成した。例えば、集中力が低下しているときは、持ち主の身体の動きが多くなったり、普段よりもスマホの画面を見る回数が増加したりしやすい。こうした行動の変化を観察することで、集中力を推定することが可能となっている。
■ 運転前のチェックに活用も
この技術を用いることで、トラックやバス、タクシーの運転手は、前日までのスマホの使い方から当日の集中力を推定することができる。その結果、低下する可能性が高いとわかった場合は、運転手自身が適切に休憩を取ることで業務パフォーマンスの向上に努めることができるという。また、企業が働き方改革を推進する一環として、就業者が自身の集中力を可視化し理解することで、働く一人ひとりの意識改革や非効率な勤務状況の見直しへの活用が期待できるとした。
厚生労働省の「こころの健康 気づきのヒント集」によると、適度なストレスは集中力を高める効果があることが知られている。そのため今後は、開発チームが2018年の3月に開発したストレス推定技術と組み合わせ、ストレスと集中力の状態から、人にかかるストレスが適切なものなのか否かを読み解くことができる技術の開発に取りかかる予定だ。