現在、サッカー界でゴールキーパーの最も主要な守備力評価指標となっている「セーブ率」に代えて、サッカーのシュートストップの難易度を定量化して評価指標とする「シュートストップ失敗確率予測回帰式」の検証を行っていた筑波大学体育系の平嶋祐輔特任助教、中山雅雄准教授、浅井 武教授らの研究グループは、「回帰式」の評価指標が世界トップレベルのゴールキーパーのシュートストップ能力を基準として、シュートストップ失敗確率を予測する上で一般化可能な、有用な評価式であるとの研究成果を発表した。
これまでのセーブ率による評価指標では、ゴールキーパーが簡単なシュートを止めても、難しいシュートを止めても、「1本止めた」という同じ評価になるため、シュートの難易度が考慮されず、シュートストップ能力を適切に評価できる指標ではなかった。
ところが、回帰式を用いた新しい評価指標によると、「失敗確率何パーセントのシュートを止めた」のように、1本1本のシュートに重み付けをすることができるようになることから、シュートストップの難易度を考慮した評価が可能となる。
選手起用・獲得にも活用が期待
シュートストップ失敗確率を期待値に置き換え、積算することによって予測失点が算出され、実失点を予測失点で除することにより、予測された失点をどの程度減少させたか評価することが可能になり、先発選手の選択や選手の獲得などにも有用な評価指標となることが期待される。
近年サッカーでは、ゲーム中のパフォーマンスを数値化し、客観的に評価しようとする試みが国内外で数多く行われている。監督や分析を担当するスタッフが、自チームの強化、相手チームへの対策として、データを活用してきた。
ゲーム中のパフォーマンスを数値化し、客観的に評価
しかし、時代とともにテクノロジーが向上して取得できるデータの領域が拡大し、それに伴ってデータを扱う層も活用の範囲も年々拡大している。特に、ゼネラルマネージャーや編成スタッフ、スカウトなどは、実際のプレーや映像を観察した上での主観的評価による判断だけでなく、データから算出された客観的評価指標を用いてチーム編成や選手獲得の判断を行うことも増えている。
筑波大の研究グループが構築した「シュートストップ失敗確率予測回帰式」は、2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会での枠内シュート551本のデータを標本として難易度を定量化したもの。ただし、信頼性や妥当性は検証されていなかった。
このため、算出される失敗確率の信頼性および妥当性を検証し一般化の可能性を明らかにすることを目指し、研究グループは、ゴールキーパーの守備力評価指標に焦点を当て、2014FIFAワールドカップブラジル大会全64試合における枠内シュート587本のデータを標本として、試合のビデオ映像を基に、回帰式の感度、特異度、的中率、正診率などゲームパフォーマンス分析手法によってデータの収集を行った。