2017年11月21日 サッカー場で5G無線実験 阪大、世界初「ミリ波通信」で課題を解決

大阪大学大学院基礎工学研究科の村田博司准教授がリーダーを務めている日欧国際連携共同研究プロジェクトRAPIDは、Jリーグの「ガンバ大阪」の本拠地にもなっている大阪府吹田市の市立吹田サッカースタジアム(4万人収容)において、大規模サッカースタジアムとしては世界で初めてミリ波を用いた次世代の5G無線通信実験を行い、未来のスマートフォンの通信速度の大幅な向上に有効であることを明らかにした。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、数万人の観客が集まる大型競技場においても快適な無線通信を実現できる次世代無線システム、『5G無線』が求められている。

今回、村田准教授らの研究グループは電波の届く範囲を制限しやすく、電波干渉を抑えることが可能なミリ波の特徴に着目し、光ファイバ無線と呼ばれる無線と光通信の融合技術を巧みに利用した通信システムを構築し、実証実験を行った。

ミリ波の通信のためのアンテナ局を客席の天井等に分散配置することで、スタジアムのように大勢の観客が着席しているような環境において、高速な通信が可能であることを実証した。

さらに、光ファイバ無線を用いて、5Gシステム設計のための詳細な特性を取得することにも成功。東京オリンピックのメイン会場のような大規模スタジアムでの5G開発が加速することが期待される。

5G無線は、現在普及しているLTEなど4Gの次となる第5世代移動通信システム。2020年の実用化を目指した研究開発が進められている。超高速通信に加えて、低遅延性や多端末の接続などの性能向上が期待されている。

5G無線システムの研究開発が盛んに行われているが、大都市部の街頭やオフィス等での開発が中心で、5G無線の優れた性能を活かすにはスタジアムのような多くの人々が集まる環境での利用が非常に期待されている。世界的は4G無線の普及がまだ進んでいないこともあり、実際のスタジアム環境の5G実験は報告されていない。

5Gで利用されるミリ波は高速通信に適しており、電波干渉を小さく抑えることが可能。しかし、通信のためのアンテナ局を多数設置する必要で、アンテナ局のコストを低く抑えることが大きな課題になっている。

村田准教授らの研究グループでは、アンテナ局をシンプルなリモートアンテナとして動作させることで低コスト化の実現を提唱している。

従来、アンテナ局で個別に行っていた無線信号の処理機能を中央局に集中させて、多くのアンテナ局で共用することで、システム全体のコストを抑える構成。アンテナ局の構成の簡素化に有効な新たなアンテナの開発や、光ファイバ無線を用いた伝送システムの設計・試作を行い、スタジアムでの実証実験に成功した。

5Gでは既存のWi―Fiや4Gなどの通信システムとミリ波を連携して快適な通信環境を実現することも重要。

既存通信との連携のために、モバイルIP技術を活用することで、利用者が意識することなく、Wi―Fiや4Gとミリ波の通信を自動で適切に切り替えることができるシステムを開発し、スタジアムでの実証試験で動作を確認した。

 

東京オリンピックへ開発加速

今回の研究成果は、無線・アンテナ関係の国際会議2017 IEEE CAMAにおいて公開されるが、サッカースタジアムのような多くの観客が集まる、例えば、オリンピック競技場、野球場などにおいて5G無線が有効であることが明らかになった。

今後、オリンピックやワールドカップでの5G無線の開発がますます加速することが期待される。


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