経済産業省は2月19日、独立行政法人情報処理推進機構を通じて実施した中小企業等におけるサイバーセキュリティ対策に関する実態調査の結果を公表した。それによると、約7割の中小企業で組織的なセキュリティ体制が整備されていないという実態や、過去3年間にサイバー攻撃の被害に遭った中小企業のうち約7割が取引先にも影響が及んだ、いわゆる「サイバードミノ」(サイバー攻撃により、被害が連鎖して取引先やその先まで企業の業務が停止するような事態)が起きているという実態が明らかになった。その一方で、普段からセキュリティ対策投資を行っている中小企業の約5割が、取引先との取引につながったと実感しているという実態も判明した。
近年、産業界において、業務のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進んでいるが、一方で、サイバー攻撃の被害に遭うリスクや、被害に遭った際の影響が深刻化するリスクも高まっている。
中でも、サイバーセキュリティ対策が比較的強固でない中小企業や小規模事業者を狙った攻撃も増加している。例えば、企業のデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェアの被害企業の約6割が中小企業といったデータもある。また、中小企業等がサイバー攻撃の被害に遭った結果として、当該中小企業等と取引していた大企業の操業が停止するなど社会的に大きな影響が生じるような事案も発生している。
こうした背景を踏まえ、経済産業省では、独立行政法人情報処理推進機構を通じて、中小企業等におけるサイバーセキュリティ対策をさらに促進するための政策検討に役立てるための実態調査を令和6年10月から12月にかけて実施した(全国の中小企業等4191社の経営層に対するウェブアンケート及び、そのなかから21社の経営層に対するヒアリングを実施)。
その結果、主として―
1.約7割の企業が組織的なセキュリティ体制が整備されていない
2.過去3期における情報セキュリティ対策投資を行っていない企業は約6割
3.情報セキュリティ関連製品やサービスの導入状況は微増
4.過去3期内でサイバーインシデントが発生した企業における被害額の平均は73万円(うち9.4%は100万円以上)、復旧までに要した期間の平均は5.8日(うち2.1%は50日以上)
5.不正アクセスされた企業の48.0%が脆弱性を突かれ、他社経由での侵入も19.8%
6.サイバーインシデントにより取引先に影響があった企業は約7割
7.セキュリティ対策投資を行っている企業の約5割が、取引につながった
8.サイバーセキュリティお助け隊サービスの導入企業の5割以上が、セキュリティ対策の導入が容易と回答し、また3割以上の企業が費用対効果を実感している―
ことが明らかになった。
実態調査から、サイバー攻撃による被害は決して自社のみに留まるものではなく、被害が連鎖して取引先やその先まで企業の業務が停止する「サイバードミノ」が起きていることが明らかとなっている。また、サイバーセキュリティ対策は単なるコストと受け取られがちであるが、実態調査を通じて判明したとおり、普段からサイバーセキュリティ対策投資を行っていると、そうでない場合の2倍近くの取引につながっているという実態があり、対策投資を行うメリットもあると言える。
リーフレットでは、そうした実態を紹介しながら、サイバーセキュリティ対策の必要性を理解しつつも「何をしたらよいか分からない」「セキュリティにコストをかけられない」中小企業等の方向けに、安価で効果的なサイバーセキュリティ対策を提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を案内している。サイバーセキュリティお助け隊サービスは、実際に導入している中小企業からも「導入が容易」や「コスト削減につながる」といった声をいただいている安心・安全のサービス。
これまで経産省のセキュリティ政策として、各種施策の情報を一覧的に掲載していたが、各施策の対象となる方々の属性に応じて、必要な政策情報に簡単にアクセスできるよう、構成を見直した。
具体的には、「サイバーセキュリティ政策」のトップページにおいて、以下の属性の方向けの入口を設置している。
・サイバーセキュリティ対策をはじめたい・支援策を知りたい方(中小企業等の方)
・サイバーセキュリティ対策を強化したい方(大企業等の方)
・サイバー攻撃事案(インシデント)に対処したい方
・サイバーセキュリティの製品・サービスを提供する企業の方
ウェブサイトについては、サイバーセキュリティ政策(経済産業省HP)からアクセスが可能。
併せて、外国向けの同省施策に係る情報発信も充実させるべく、英語版のウェブサイトも大幅に改修した。Cybersecurity(経済産業省英語版HP)からアクセスが可能。