東北大学大学院教育学研究科の研究グループは、コロナ禍での同居家族の基礎変数と、コロナ禍で取り上げられている家族に関する社会問題との関連を調査した。コロナ禍で、どのような家族が配偶者からの暴力や児童虐待などの家族問題を生じうるかを予測したもの。その結果、①喫煙者ほど配偶者からの暴力を受けやすい可能性がある、②未就学児を持つ人ほど、虐待をしてしまうのではないかという不安が高いことが明らかとなった。さらに、③収入が減った家族、仕事をしている人、部屋数が少ない家族ほどインターネット依存になりやすい可能性がある、④収入が減った家族、新型コロナ感染症に対する意見の対立がある家族ほど精神的健康が良くない可能性があるも判明した。研究グループでは、この調査結果は、直接的な因果関係の証明ではないが、リスク評価として参照可能としている。
コロナ禍2年経過、目立つ家庭内の問題
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、人々は家で過ごすことを余儀なくされるようになり、早くも2年が経過している。このような状況のなか、家族内でさまざまな問題が目立つようになった。具体的には、児童虐待やインターネット依存、家庭内暴力や離婚、自殺率の増加などがあげられる。
しかしながら、どのような特徴を持つ家族でこうした問題が生じているのかについては不明だった。東北大大学院教育学研究科の鴨志田冴子氏(博士課程後期在籍)、若島孔文教授を中心とする研究グループは、コロナ禍における同居家族の基礎変数と、コロナ禍で取り上げられている家族に関する社会問題との関連を調査した。
新型コロナウイルス感染拡大により、各国の政府は医療的措置に加え、都市や地域,場合によっては国全体をロックダウン(都市の隔離封鎖)。必要な従業員のみが出勤できるリモートワーク制度の導入や、学校の一斉休校といった人の出入りをできる限り制限するという形での対策が実施された。
こうした取組により、人々は家で過ごすことを余儀なくされるようになり、早2年が経過としている。一方,家族で過ごす時間が増えたことで、家族にまつわる問題が増えている。具体的には、「児童虐待の増加」や「ネット依存の増加」などが社会動向として挙げられる。しかしながら、これらの社会問題と具体的な家族内の要因の関連は明らかではなかった。
収入減で精神的健康が悪化
調査の結果、コロナ不安については関連がみられなかったが、喫煙をしている人ほど、配偶者からの暴力を受けやすい可能性がみられた。未就学児がいる人ほど、虐待をしてしまうのではないかという不安が高い可能性も浮き彫りとなった。
さらに、コロナ禍に収入が減った家族、コロナ禍でも有職の家族、部屋数が少ない家族ほど、インターネット依存になりやすい可能性が判明した。最後に、コロナ禍に収入が減った家族、コロナに対する意見の対立がある家族ほど、精神的健康が良くない可能性があることがわかった。
未就学児がいる人ほど虐待不安を持ちやすいことや、収入がコロナ前と比べて減った人が精神的な不健康につながることはコロナ禍とは関連のない先行研究でも指摘されていたが、喫煙者が配偶者からの暴力を受けやすい可能性や、仕事をしている人ほどインターネット依存に陥りやすい可能性は一部コロナ禍の特さを反映しているのではないかと考えられるという。
例えば、喫煙は重症化リスク要因であると言われていることから、夫婦間の葛藤や暴力に繋がっている可能性を指摘。また、従来インターネット依存は仕事をしていない人で傾向がみられていたが,今回の調査では逆の結果となった。
理由として、コロナ禍によるリモートワークの導入などにより、仕事をしている人でも1日中インターネットに触れている時間が多くなっている可能性も推察される。