公害等調整委員会(以下「公調委」)は、公害等調整委員会設置法第17条に基づき、毎年、国会に対し所掌事務の処理状況を報告しており、このほど令和2年度の報告を行った。今回は、「コロナ禍における公害紛争処理」について特集しており、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、審問期日等における出席人数の抑制等、ウェブ会議の活用、押印の見直しなど、感染防止のための対策を講じたこと、公調委と地方公共団体が役割分担をしながら、公害紛争処理や公害苦情処理を担っているため、両者の情報共有・連携強化は重要であり、令和2年度はインターネット動画配信によるセミナーを新たに開催したことなどについて紹介している。
特集では、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、感染防止のために講じた対策として、①審問期日等における出席人数の抑制、マスク着用、アルコール消毒、間隔確保等、②公調委における各種会議やヒアリングは、原則としてウェブ会議により実施、③公害紛争処理等の手続について、国民に押印を求めないこととするよう法令を改正、を紹介している。
また、公調委と地方公共団体が役割分担をしながら、公害紛争処理や公害苦情処理を担っているため、両者の情報共有・連携強化は重要であり、令和2年度はインターネット動画配信によるセミナーを新たに開催した。
さらに、在宅時間の増加に起因する新たな近隣トラブルが公害紛争に及ぼす影響について取り上げている。
公害紛争の処理状況について、令和2年度に公調委に係属した公害紛争事件は、前年度から繰り越された37件(裁定事件35件(責任裁定事件21件、原因裁定事件14件)、調停事件2件)と、2年度に新たに受け付けた14件(裁定事件14件(責任裁定事件9件、原因裁定事件5件))の計51件である。このうち、15件が令和2年度中に終結し、残り36件は翌年度に繰り越された。
新たに受け付けた事件の件数は、平成30年度24件、令和元年度20件、2年度14件となっている。
なお、これ以外に委員会は、不知火海沿岸における水俣病に係る損害賠償調停申請事件において成立した調停条項に基づき、慰謝料額等変更申請を処理している。
公害紛争の近年の特徴として、近隣店舗の室外機からの騒音や飲食店からの悪臭など、比較的小規模な事件が目立つこと、令和2年度に係属した事件のうち、騒音をめぐる事件の割合が最も高く約5割を占めていることなどをあげている。
都道府県・市区町村との連携について、令和2年度は83件の事件が係属し、37件が終結するなど、事件の適正な処理に努めている。
また、新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、令和2年度は、公害紛争処理連絡協議会を試行としてウェブ会議で開催、インターネット動画配信による「地方自治体職員向けウェブセミナー」を新たに開催した。
令和元年度の全国の公害苦情の新規受付件数は約7万件であった。