新型コロナウイルス感染症の拡大防止の一環として講じられている臨時休業などで学校に登校できない子供たちへの支援と学校再開後の在り方について、中央教育審議会初等中等教育分科会及び新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会は、文部科学省をはじめとする関係行政機関を含む全国の学校教育関係者に対し、1)多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応、2)文部科学省による教育現場への徹底した支援、3)子供たちの学び合う場の確保―を要請している。
子供たちが予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力を育むために学校教育は不可欠であり、子供たちの学びを止めるわけにはいかない。このため、新型コロナウイルスの感染拡大に歩止まり傾向が見られる地域においては、登校を再開する学校も出てきた。
初中教育分科会などは、学校教育関係者に対し、①学校現場において創意工夫し、多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応を行う、②文科省による教育現場へ徹底した支援が必要、③ICT環境の整備を確実に進めるとともに、教師の対面指導により、多様な子供たちを誰一人取り残さない個別最適化された学びの実現のため、子供たちの学び合う場を確保することが重要だとして、今後議論を深めていくようメッセージが取りまとめたもの。
今回の臨時休業により、子供たち、保護者、地域の人々にとって、社会のセーフティーネットとしての役割をも果たしている学校という存在の持つ役割や意義の大きさ、教職員の日頃の取組の重要性が改めて浮き彫りになった。学校においては、感染防止に配慮しつつ、電子メール、ホームページなどのICTや電話、郵便などのあらゆる手段を活用して、できる限り子供たちや保護者とつながることを意識するよう要請している。
学び保障へ文科省に毅然とした姿勢を要請
文科省に対しては、前例がない事態からの学校再開に向けては、子供たちや保護者の不安に向き合い、安全・安心を確保する観点から、学校健診に必要なマスク・手袋などの用意を含め、学校における感染防止を徹底するための環境の整備を進めるとともに、同時にまさに「社会総がかり」で子供たちの学びの回復支援を図る必要があると指摘している。
そのために、地域の実情に応じつつ、学校現場や各地域の創意工夫による取組を可能とするため人的・物的両面から大胆な財政支援策を講じることで、国として子供たちの学びを確実に保障する毅然とした姿勢を示すよう要請している。
また、AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ、教師による対面指導や子供同士による学び合い、地域社会での多様な学習体験の重要性がより一層高まっていくものと強調。教師には、先端技術を活用しながら、子供たちに対話的、協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められるとの認識を示している。
こうしたことを踏まえ、新型コロナウイルス感染症の収束後の学校教育においても、不登校や特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残さない個別最適化された学びの実現のため、各自治体においてICTの整備を確実に進め、チーム学校の観点から教職員のみならず様々な専門職の学校のサポーターが学校を支えるなどの指導体制の充実を図り、子供たちの学び合う場を確保することが重要であることを、全国の教育関係者と共有し、議論していきたいと今後の方向性を示した。