自治体のDX支援を得意とする「ガバメイツ」と介護現場向けIoTの「コニカミノルタQOLソリューションズ」が10月、高齢者施設の入居者をセンサーなどで見守り、介護業務を支援する「HitomeQ ケアサポート」を、愛媛県今治市の8施設600床に導入すると発表した。
都道府県が主導する形で、同一自治体の複数の施設で網羅的に「HitomeQ ケアサポート」を運用していくのは初めて。システムを通じて蓄積した情報を、要介護認定の効率化などにつなげる意欲的な挑戦も行っていく。
「HitomeQ ケアサポートにより、データを活用した科学的介護や高齢者の自立を支援し、介護業界全体の業務負担の軽減やケア品質の向上に貢献していく」。コニカミノルタの担当者はこう話す。
「HitomeQ ケアサポート」は、利用者の居室の状況を天井から俯瞰的に把握できる。プライバシーに配慮した精度の高い見守り機能に加えて、利用者の生活リズムや行動パターンを分析・共有する機能も重要だ。それをデータに基づく質の高いケアの実践、職員の負担を軽くする最適な業務オペレーションの提案などにつなげる。このほか、転倒などの緊急時に自動録画して早期発見、再発防止に役立てる機能も備えている。
コニカミノルタの担当者は、「利用者さまの行動起点で手元のスマートフォンですぐに映像を確認できるため、異変があったか、安全かどうかなど状況をしっかりと把握し、次の行動につなげられる。また、利用者さまの行動特性も把握できるため、個別ケアにも活用できる」と説明する。
コニカミノルタは2013年から、深刻な人材不足の解消に貢献する見守りシステムの開発を始め、開発当初から〝介護現場に学ぶ〟ことにこだわってきた。その中で、導入されても十分に活用されていないICT・介護ロボットの存在を知り、導入だけでなくオペレーションの定着まで2人3脚で進むサービスの提供に取り組んだ。
「導入施設さまが弊社の想定していない使い方をしていると知った時は愕然としましたが、施設さまと向き合い、現場に定着するオペレーションを共に作り上げることができました」。開発担当者はこう振り返る。
今回の取り組みではガバメイツとともに、自治体レベルの介護DXの実現に貢献していくことも目指す。重点的に取り組むのは、現場の負担が特に重い要介護認定プロセスの効率化だ。「HitomeQ ケアサポート」に蓄積される利用者の様子、行動、あるいは職員の介入頻度など有用な情報を共有。日々の状態の把握を可能な範囲で自動化・合理化し、同時に精度の向上も図る。
コニカミノルタの担当者は、「2021年から実証実験を行ってきたが、今回のように1自治体でこれだけまとまったデータが収集できる事例は全国的にも例がない」と説明。「匿名性を担保しつつデータ利活用が可能な先進的な事例にできると期待している」と意欲をみせた。