国土交通省の不動産投資市場政策懇談会では、懇談会の下に設置した制度検討ワーキング・グループで、今年6月から不動産特定共同事業(組合形式で出資を行い、不動産の売買や賃貸による収益を配当して投資家に還元する事業)に関する制度のあり方を検討してきたところである。同懇談会はこのほど、地方創生に資する空き家・空き店舗の再生を促進し、また、観光や物流等の成長分野での不動産の再生を促進する観点から、不動産特定共同事業に関する制度のあり方について報告書を取りまとめた。報告書では、不動産特定共同事業に関する制度について、小規模不動産特定共同事業に係る特例の創設、クラウドファンディングに対応した環境整備、良質な不動産ストックの形成を促進するための規制の見直しの3つの方向性を示している。
空き家・空き店舗等が全国で増加する一方で、志ある資金を活用して不動産ストックを再生し、地方創生につながる取組が拡大している。
このような取組において、組合方式で出資を募り、不動産の賃貸等から収益を得て投資家に還元する場合、不動産特定共同事業法が適用されるが、その許可要件は地方の事業者にとってはハードルが高く、見直しが必要とされている。
また、地域活性化事業への資金調達方法として、インターネットを活用したクラウドファンディングが広がっているが、不動産特定共同事業では書面での取引しか想定しておらず、電子化への対応が求められている。
さらに、観光や物流等の成長分野を中心に質の高い不動産ストックの形成を促進するため、不動産特定共同事業がより一層活用されるような規制の見直しが必要である。
検討の方向性
報告書で示された検討の方向性のうち、小規模不動産特定共同事業に係る特例の創設では、空き家・空き店舗等の再生・活用事業に地域の不動産事業者等が幅広く参入できるよう、事業規模に一定の上限を設定した同事業を創設する場合、事業者の資本金要件等の許可要件を緩和し、新規参入を容易にするとともに、投資家保護にも配慮することが必要とした。
クラウドファンディングに対応した環境整備では、不動産特定共同事業において、投資型クラウドファンディングに対応するよう、インターネットを通じて事業を行う規定の整備が必要とした。その一方で、投資家に対する適切な情報の提供など一定の行為規制の整備も必要との見解を示している。
また、契約締結前書面等の電磁的記録による交付等に関する規程を整備することも求めている。
良質な不動産ストックの形成を推進するための規制の見直しでは、成長分野への良質な不動産供給のため、不動産特定共同事業がより活用されるよう、①特定投資家のみを対象とする事業における約款規制の緩和、②特例投資家のうち、一定要件を満たす者のみを事業参加者とする事業における規制緩和、③特例事業への事業参加者の範囲を一般投資家まで拡大―といった規制の見直しを行うことが必要としている。
このほか、忠実義務等の充実、「専ら」要件の緩和、標準的モデル約款の作成・見直し、指針等の充実についても検討することを提言している。