2017年4月6日 わずか1日で魚種の8割を検出 海水からのDNA解析法が有効

魚類を外見によって区別する潜水や捕獲に頼って行われていた海洋での魚類生物相調査は多くの人手を必要とし、専門知識も必要としていたが、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業において、神戸大、京都大、北海道大、龍谷大、千葉県立中央博物館の研究グループは、海水中に含まれる排泄物などのDNAから周辺海域に生息する魚種を明らかにする新技術を使うことで、目視観察よりも効率の良い魚類生物相調査が可能なことを明らかにした。

「環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)」と呼ばれる調査法は、魚が放出して海水中に存在するDNAを回収・分析し、放出源となった魚種を特定するというもの。研究グループは、京都府北部の舞鶴湾において、環境DNAメタバ―コーディングを利用することで、現地調査をたった1日で行い、海水試料から128種もの魚類のDNAを検出することに成功した。

この128種には2002年から14年間、計140回の潜水目視調査で観察された種の6割以上が含まれる。ある年だけ偶然舞鶴湾へ回遊してきた魚種を除くと、8割近くを1日の調査で確認できたことになる。目視では確認されていなかった魚種も検出できた。目では区別しにくい仔稚魚期を調査海域で過ごす魚種を初めて検出できたと考えている。

研究グループでは、魚種が多い場所でも、短期間で多地点の魚類相を環境DNAメタバーコーディングで調べることが可能なことが分かった。広域にわたっての外来種の侵入や分布拡大の調査、さらには、アクセスが難しい深海や地底湖、危険な汚染水域や生物の採集が禁止されている保護区でも活用が期待される。

生物多様性を明らかにすることは、地域の生物相の保全や生物資源を管理する上で重要。日本近海は世界的に見ても魚類の多様性が特に高く、これらを保全・管理する上で魚類相の把握は欠かせない。

環境DNAメタバーコーディングは、「水を汲む」という単純作業によって「いつでも」「どこでも」「誰でも」魚類集調査ができるようになるもので、魚類生物相調査にかかる労力と時間を大幅に軽減でき、これまでの調査法では不可能だった短期間に多地点の魚類調査が可能。

現在全ての魚種についてDNAが揃っているわけではないため、DNAを検出しても、そのDNAがどの魚種に由来するのかが分からない場合がある。研究グループでは環境DNAメタバーコーディング解析に必要な魚類のDNAデータベースの充実度を上げることによって、より幅広い魚種が検出できるように今後も改善を続けていきたい意向だ。


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