日本財団遺贈(いぞう)寄付サポートセンターは、5回目となる「ゆいごん川柳」の入賞作品を発表した。応募8809作品の中から、大賞1作品、入賞3作品、遺贈寄付サポートセンター賞1作品、佳作5作品の計10作品を決定。大賞には東京都在住の主婦(60歳)による作品「介護した 嫁も立派な 相続人」が選ばれた。
日本財団は、夫婦や家族で〝遺言〟について話し合う機会にしてもらいたいと、1月5日を「遺言の日」に制定し、遺言の必要性を発信している。この遺言の日に合わせて、老後の不安や進まない終活をユーモアで笑顔に変える「ゆいごん川柳」を、昨年10月2日から11月4日にかけて募集した。
今回のゆいごん川柳では、毎年協力している全日本川柳協会をはじめ、「化け物使い」「酢豆腐」等の本格派古典落語、「後見爺さん」「天国からのラブレター」など成年後見落語でおなじみの落語家の桂ひな太郎さんが選考委員として参画。さらに、相続・遺言エンターテイメント講演「日本一楽しい!相続&遺言書教室」が大好評の相続遺言専門行政書士・佐山和弘さんも審査した。
大賞に輝いた「介護した 嫁も立派な 相続人」。民法では相続人は配偶者、子、直系専属、兄弟姉妹となっており、息子と結婚した女性(嫁)は介護に尽くしても相続人となることはできなかった。しかし、民法改正により、2019年7月以降、特別寄与料の制度が設けられたことから、相続人以外の親族で被相続人に対して特別な寄与をした者はその貢献が考慮され、相続人に対して特別寄与料を請求できるようになった。大賞作品は、こうした制度改正を踏まえており、選考委員は、「長年の介護の苦労が法的にも報われた」と、ねぎらった。
入賞作品は「コロナ禍で 遺言までも オンライン」(76歳無職)、「書いとけと コロナ背を押す 遺言書」(75歳フリーランス・自営業)、「遺言は 争族予防 ワクチンだ」(70歳無職)の3作品。昨年来最大の社会関心事となっているコロナ禍と、感染拡大防止のために進められたオンラインといったワードを用いている。選考委員からは「コロナ禍で誰がいつどこで感染するかわからない。残された家族のために遺言書を書いておくのも安心のため。家族もそれを望んでいるのでしょう」とコメント。
佳作は「きっかけは コロナ・台風・大地震」(61歳主婦)、「使い切れ 遺産の世のため 人のため」(55歳男性学生)、「20000日 歩んだ妻へ 感謝状」(38歳会社員)、「タイトルは 遺言でなく 感謝状」(76歳無職)、「常日頃 口に出さない 文字を書き」(67歳男性)の5作品。遺贈寄付サポートセンター賞には「寄付をした 父の遺影に キスをする」(38歳公務員)を選出。財産分与について揉めるよりもと、あっさりと世のために寄付をした父。子供たちも立派な父だったと誇らしく、思わず遺影に口づけをしたという。
日本財団は、2016年に日本財団遺贈寄付サポートセンターを開設し、遺贈寄付の周知啓発に取り組んでいる。「遺贈寄付(いぞうきふ)」とは、遺言書により、遺産の一部またはすべてを相続人以外の特定の人や団体などに寄付すること。少子化や未婚の増加などにより〝おひとりさま〟が増えているなか、遺贈についての関心が高まっている。財団が昨年11月に実施した調査でも、60歳以上の五人に一人が遺贈寄付に関心があることが明らかとなった。一方で、日本の年間相続額が約16兆円を超えるなかで年間遺贈寄付額は約339億円にとどまるといわれ、遺言書を遺す人が20人に一人にも満たないことが原因の一つと考えられている。
財団では、日本財団遺贈寄付サポートセンターを通じて遺贈する場合の遺言書の書き方や遺贈先の選定に関する相談業務を実施するとともに、遺言の大切さや必要性を広く社会に向けて周知する取り組みを実施している。