全国で介護事業を展開する株式会社SOYOKAZE(旧社名:ユニマット リタイアメント・コミュニティ)は、料理に特化した半日型デイサービス「なないろクッキングスタジオ」を運営している。
いわば〝料理療法〟で高齢者の元気をつくる通所介護とは、いったいどのような現場なのか。東急東横線の自由が丘駅から10分ほどの場所にある東京・自由が丘の事業所を取材した。
2015年に開設されて今年で8年目。午前と午後の2部に分かれた料理教室に加え、作った料理を利用日以外の利用者やその家族にも宅配するなど、充実したサービスの提供に努めてきた。
現在、自由が丘、成城、三軒茶屋に3事業所を構える。主に世田谷区、目黒区、渋谷区、大田区から通っている方が多い。
サービスは体温、血圧などを測るバイタルチェックから始まった。その後、当日のレシピや旬の食材、調理法などを学ぶ「なないろアカデミー」を開催。利用者みんなで食事を作って食べた後、またみんなで協力して片づけをする。それが毎回の流れのようだ。
料理中は利用者がひっきりなしに動き回る。全員分の食材を計量したり、セラミック包丁で食材を切ったり、IHヒーターを使って調理をしたり、利用者に課された役割はさまざま。サポートに入る事業所のスタッフと2人3脚で作業を進めていく。
この日テーブルにのった料理は、「彩り野菜の豚肉巻き照り焼き」「鶏肉と大根の煮つけ」「ブロッコリーとえのきの梅肉おかかあえ」など5品目。午前も午後もメニューは同じだが、仕入れの状況などで変更になる場合もあるという。自分たちで作った料理を食べる利用者たちは、やはり満足げな様子だった。
選ばれる理由はどんなところにあるのか。
女性の利用者の1人は、「皆さんと会話をしながらお料理をすることは気分転換やストレス解消になる」と話した。「定期的に外に出ることは必要だし、ここで学んできたことを家でたまにやってあげると、かみさんも喜ぶ」。男性の利用者はそう言ってはにかんだ。
この「なないろクッキングスタジオ」は、高齢者を元気にするまだどこにもない新しい介護サービスの形を作りたい、という思いから始まった。今までにない都会的でオシャレな事業を検討した中で、生まれたアイデアが料理をベースとしたデイサービスだったという。盛り付けや皮むき、食材のカットなどで五感を使うことで、身体機能や認知機能の活性化に効果があるとの研究成果も参考にした。
運営を任される神永美佐子事業統括本部長は、「デイサービスが乱立する中で、他社と違う付加価値をつけていかないと差別化にならない。ただの遊びで終わらせるのではなく、ご利用者様の自立支援・重度化防止にしっかりとつなげていくことが大切だ」と説明。今後については、「適切な場所があれば店舗数を増やしていきたい」と意気込んだ。