2017年8月1日 ひずみを測定してFRPM管の安全性を診断 農業用水パイプラインの漏水事故を未然に防止

農研機構農村工学研究部門は、茨城大学、(株)栗本鐵工所、積水化学工業(株)と共同で、農業用水のパイプラインとして地中に埋設されたFRPM管のひずみを測定して安全性を診断する手法を開発した。

地中に埋設されたFRPM管は管周辺の土から圧力(土圧)を受けて変形しており、従来は全体の変形の程度(たわみ率)を測定して、安全性を診断していた。しかし、管の一部に荷重が集中した場合には、局所的に変形してひび割れに至ることもあるため、たわみ率だけでは安全性を正確に診断することはできなかった。

今回開発された手法は、局所的な変形を測定し、FRPM管の安全性を診断するもので、FRPM管の曲率半径を測定し、発生しているひずみを計算する。そのひずみの大きさから、診断表を用いて安全性を定量的に診断できる。この手法を用いることで、これまで見逃していた局所的に変形した危険な箇所を、漏水に至る前に発見できるようになる。

 

FRPM管の変形を把握し、安全性を合理的に診断する手法へ期待


FRPM管

FRPM管は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)と樹脂モルタルの複合材料で構成された管。軽量で施工性が良く、耐食性、耐摩耗性にも優れている。地中に埋設された農業用水のパイプラインとして、日本全国に広く普及している。また、下水道等の農業用分野以外でも使用されている。

埋設後数十年経過したFRPM管も多く、その間に地下水や地盤沈下等の影響で、管周辺の土が不均一になり、管の一部に大きな荷重が作用することがある。そうした場合、FRPM管は局所的に変形して、ひび割れを生じ漏水事故に至ることがある。漏水事故は営農活動に支障を来すだけでなく、交通障害などの二次被害を引き起こす場合もある。そのため、FRPM管の変形を把握し、安全性を合理的に診断する手法が求められていた。

 

局所的な変形である〝ひずみ〟に着目

従来のたわみ率を指標とした診断手法は、一定の指標にはなるものの、局所的に変形した箇所を発見することができなかった。漏水事故の調査でも、許容値以下のたわみ率であっても、ひび割れなどの被害が見受けられた。

そこで、農研機構は、共同研究機関とともに、局所的な変形であるひずみに着目し、ひずみを指標としたFRPM管の安全性の診断手法の開発を行った。

 

 開発された診断手法の特徴

今回開発された診断手法では、FRPM管に発生しているひずみを測定し、診断表を用いて安全性を診断する。ひずみは、曲率測定装置を用いてFRPM管の曲率半径を測定し、曲率半径の大きさから算出する。研究では、口径800mm~2400mmのFRPM管を対象とした検証実験が行われたが、この方法によりひずみを測定できることが確認された。

安全性診断に関しては、破壊時のひずみを求めるためのFRPM管の破壊試験を実施して、ひずみから安全性を診断する診断表を作成した。

また、この診断手法の現場での適用性が検証されたが、管頂・管側・管底等の各所でひずみを計測して、FRPM管の局所ごとに安全性診断が可能となった。さらに、この手法が容易に導入でき、現場で活用できることも確認されている。

 
 より合理的な維持管理が可能に

今回開発された診断手法は、全国に埋設されている口径800mm以上のFRPM管の安全性を診断する際に活用することができる。対策の必要性を適切に判断できるようになり、FRPM管をより合理的に維持管理できるようになる。

また、この診断手法に関するマニュアルは、農研機構のホームページよりダウンロードすることができる。

ひずみ(μ) 対策の目安
6,000以上 新管による敷設替え/管路更生工法
4,000以上~6,000未満 2年ごとに点検、補修時期の検討
2,000以上~4,000未満 5年ごとに点検
2,000未満 10年ごとに点検

 


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